二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

超のまかぷ。っていうか見た事無い← ( No.95 )
日時: 2011/02/05 10:41
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)




 ———音無さん。
 少し息が切れた声で俺が彼女の名を呼ぶと、彼女は藍色の柔らかい髪を揺らしてクルッと振向いた。ついさっきまで行われていた練習で、音無さんも疲れている筈なのに。俺に見せたのは、疲れを感じさせない明るい笑顔だった。

「どうしたんですか?」
「いや……木野さんが探してたから」

 この先の基山の部屋に用事がある俺。音無さんを見かけて、木野さんが呼んでた事を偶然、思い出したから。肝心の音無さんは、え?と首を傾げ、手元の腕時計を覗き込む。急に慌てたような表情になると、

「あぁぁぁ!?ミーティングがあるの、すっかり忘れてたっ」

 血の気が引いたような顔つきで、ダーッと走って行ってしまった。ぽつんと一人、取り残される俺。賑やかな人だな、なんて。気付くと笑っていた。自然に笑えたの、いつぶりかな?
 俺はそのまま、ゆっくりと歩き出した。

「教えてくれて、ありがとうございました!!」

 そんな彼女の声が聞こえて、振向いてみると……もうそこに彼女の姿は無くて。少し寂しかったのは、きっと気のせいだ。そう自分に言い聞かせると、音無さんの笑顔を思い出してはにやける頬をパンパン、と叩き、基山の待つ部屋へ向かった。


  ———"惚れた病に薬なし"
      ( 恋煩いは、治せない )