二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 【08】ありふれた日常のひとコマ -02 ( No.97 )
- 日時: 2011/02/05 09:02
- 名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)
部活開始を告げるチャイムが学校中に鳴り響く。勉強ばかりの一日から開放を告げられた生徒たちは、大急ぎでそれぞれの活動場所へ駆けて行くのだ。廊下を走る生徒も度々見られるのだが、教師側も何かと忙しいのであまり注意はされない。するとしたら、よほど熱い教師なんだろう。
先日行われた練習試合にて、あの雷門中と引き分けた実績を持つ夜桜イレブン。その十一人を率いている監督も、他の顧問と同様に部室へ向かっていた。校庭へ直接行っても良いのだが——と言うより、部室など寄らずに真っ直ぐ校庭へ向かっているのである——職員室から外を覗いた時、野球部やソフトボール部、テニス部などの活動は確認できたものの、サッカー部だけ外に出ていなかったのだ。もしかしたら、雷門との試合で見つけた課題について部員総出でミーティングを行っているのかもしれない。
そんなわけで、わざわざ狭い部室へ向かっているのだ。
「他に意見あるかー?……じゃあ、豪炎寺にプライドずったずたにされた飯島」
「悪口に聞こえるのは俺だけか」
ドアの向こうから、部員たちの声が聞こえる。盗み聞きして、選手たちはちゃんと自分の欠点に気付いているのか確かめてみようか。そんな考えも浮かんだが、ブーイングが恐ろしいので黙って部室に入ることにした。
「はーい! やっぱり夜桜はユニホームが地味なのよ。もう少し、色彩豊かなデザインに変えましょう!」
「却下。部費、ただでさえ少ないんだぞ!? それにこのユニホームは、先輩方から受け継いだものなんだ。そんな簡単に変えられるかよ」
色とは、試合の勝敗に関わるものなのだろうか。
「真面目にやらないと勝てないだろ……って監督、いつからいたんですか」
副キャプテンである森本が、やっと監督の存在に気付いた。さすが夜桜の守護神。どこかのキャプテンよりしっかり者である。
「ミーティングか……ところで藤浪はどこに行った」
一番、部員をまとめなければならない立場にある葵。今、この部室に姿は無かった。ざわつき始めるサッカー部。森本は、厭きれたような表情を垣間見せ、トーンがグッと落ちた声で呟いた。
「……キャプテンは、数学の宿題忘れて怒られてます。しかも、新聞部からのインタビューも頼まれてて……本人曰く、監督が勝手に引き受けたんで、迷惑だとか何とか」
新聞部の熱心な部長にインタビューを申し込まれていたことを、すっかり忘れていた。まあ、きっと適当に受け流して帰ってくるだろう。葵に限って、真面目に答えるだなんてことは有り得ない。そんな夜桜のキャプテンのことは、部員がよーく知っている。
しかしキャプテンを引き受けたのは、紛れもない葵自身だ。しっかりと役目を果たして貰わねばならない。
「よし、ミーティングをあと十五分間、行う。その後、ペアを作ってパス練から始めよう。いいな?」
放置されたキャプテンの帰還は、いつになることやら……———