二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

時代物の第十話!! ( No.98 )
日時: 2011/01/31 19:40
名前: 桃李 ◆J2083ZfAr. (ID: eMRX3Yay)

   第十話【菓子屋にいたのは顔見知り】



「円堂の裏切り者〜!! なんでそっちにつくんだぁぁぁ!!」
「いやー、俺もあいつ等とお前を会わせたくて」

 先程までどちらの立場にも無かった円堂だったが、今は虎丸と共に葵を引きずっていた。少年二人と少女一人。いくら剣術の腕前が男並でも、ただの力比べをしたら結果は、想像がつくだろう。本当にずるずると引きずられていく葵。桃花もちょこちょこと後をついて歩いてきた。黙ってついてくるなら、助けて欲しいのだが……

「なーお前等、僕をどこに連れて行くんだよー」

 諦めたように俯き、最後の抵抗を終えた葵。もうその頃には、目撃者がいるという家屋に到着していた。砂埃を手で払うと、煙っぽい土が宙を舞い、葵の鼻腔を突いた。くしゃみを堪え家屋を眺めると、綺麗な暖簾のれんが客人を出迎える。

「……ここは?」
「『菓子屋 雷雲』だ!ここの菓子は上手いんだぜ!」

 どうやら、円堂おすすめの一軒らしい。暖簾をくぐり店内へ足を進めると、甘い香りが鼻をくすぐった。実に菓子屋らしい。しばし甘美な雰囲気に酔いしれてから、従業員を探し始めた。わざわざこの店へ来たということは、この店の関係者なんだろう。きょろきょろと周りを見渡す……前に、一行の目には見覚えのある姿が映し出された。

「……僕って影薄いのかなぁ?あそこまで簡単に忘れ去られるなんて。こんな経験初めてで、どう対処すれば良いのかわからないんだけど」
「落ち着け吹雪。その二人もきっと、円堂に巻き込まれたんだろう」

 虎の屋で置き去りにしてしまった少年と、南蛮の品であると思われる一品を目元につけた少年が、最中片手に机を挟んで話し込んでいたのだ。当然、吹雪とその少年は、葵等の姿に気付く。

「あ……吹雪、」

 どす黒い"気"を纏った吹雪は、驚いたように……そしてどこか責めるような表情だった。