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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第ニ章 ( No.16 )
- 日時: 2010/12/02 22:19
- 名前: 双海 (ID: BdM.OEZp)
胸が高鳴り、顔が熱くなるのを感じた。
礼を言おうとするが、緊張で声がかすれる。
彼女は林檎を紙袋の上に乗せる。
「どっ、どうも。」
やっと出た、その裏返った声に、彼女はにこりと笑う。
その笑顔に、一際胸が高鳴る。
「あら、怪我しているじゃない。」
彼女は、そう言い僕の手を見つめる。
僕には紙袋が邪魔で見えないが、さっきから手が微かに痛むのを感じていた。
「手当てしてあげるわ、ついてきて。」
「あ、はい。」
彼女の有無を言わさないその態度に、僕はそう答えていた。
しばらくし、彼女は家の前で立ち止まった。
そして扉を開け、目線だけで入るように促してくる。
「おじゃまします…。」
そう言い、彼女のと思われる家の中に入る。
流れで来てしまったが、本当に来てよかったのだろうか。まだ会って間もない人の家に。
「ささ、入って。」
と、彼女は僕の背中を押し、半ば無理矢理リビングへと連れ込まれる。
「荷物、そこのテーブルに置いて、座って。」
「あ、はい。」
言われるがままに動く僕。そんな僕の前に彼女は屈む。
そして、僕の手を取り、アロエを傷口に塗り包帯を巻いてくれる。
「ありがとうございます。」
「ええ。あと、薔薇には、棘があるから気を付けてね。」
彼女はそう言い、笑う。
へぇ、薔薇には棘があるのか、これから気を付けよう。
そんなことを思いつつ、僕は彼女の笑顔に見惚れていた。
用が終わったので帰ろう、そう思い
「じゃあ、失礼しました。」
と言った。だが
「あ、待って。」
と、呼び止められる。あれ、なんか既視感。
「なんでしょうか?」
「こうして会ったのも、何かの縁。少し話しましょう?」
「強引」。そんな言葉が僕の頭の中に浮かんでは消えた。
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