二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第ニ章 ( No.20 )
日時: 2010/12/11 20:42
名前: 双海 (ID: BdM.OEZp)

 彼女は僕がパンを受け取ったのを確認し、
「じゃあ、玄関まで送るわ。」
と言った。
 急いでるのにごめん、と僕が言うと
「こちらこそ、ごめんね。」
と、彼女はさも申し訳なさそうな顔をし、そう言った。

「じゃあ、また今度。」
「ええ。」
 僕違はそんな事務的な会話を済ませ、歩き出す。
 また今度、なんて言っても、もう会う機会はないだろうな。
 そんなことを思いながら後ろを振り返ると、彼女が手を振っていた。
 そんな彼女を名残惜しげに見つめ、手を振り返す。
 彼女のものだと思われる一軒家は、とても綺麗だった。


 彼女の家からそう離れていない公園に、青い髪を持った青年がいたのが見えた。
 その青い髪の彼は、とても整った顔立ちをしていた。それと同時に、どこか見たことのある顔立ちであった。
 誰か待っているのかな、なんてことを思いつつ、僕はその公園を通り過ぎようとした時、
「カイト〜!」
という、透き通った声が聞こえた。

 その声は、さっきまで僕が話していた人物の声と酷似していた。

 ーまさか、そんなはずはない。

 そんなことを思いつつ僕は声のする方を見た。
 その声の持ち主はやはり、さっきまで話していた“彼女”だった。
 彼女はさっきの青年の所まで走って行き、何かを話し始め、笑い合う。
 その仲睦まじい姿を見て僕は、
             胸が痛んだ。

 僕は、その場から離れたい一心で走りだす。
 別に、彼女が誰と仲良くしようがそれは彼女の勝手なのだが。
 けれど、離れずにはいられなかった。
 だって、あの青い髪の青年は、王女の想い人、そして王女の婚約者…だったから。