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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第二章 ( No.21 )
- 日時: 2010/12/11 22:00
- 名前: 双海 (ID: BdM.OEZp)
程なくして馬車の止まっている場所へ戻って来る。
あの場から離れたい一心で、ただ、ただ走っていたから、どうやってこの場所に辿り着いたか覚えていない。
馬車の後ろにある座席に僕は座る。
座って初めて僕は呼吸が荒くなっていることから全力で走っていたことに気が付く。
僕は肩で息をしながら御者に、行っていい、と言った。
僕は流れゆく景色を眺めながら、別のことを考える。
あの二人の仲睦まじい姿を見る前までの、舞い上がった気分が嘘みたいに、今は落ち込んでいた。
さっきの二人の姿が頭から離れない。
その姿を思い出す度、気持ちが落ち着かなくなる。
これは、きっと…嫉妬だ。
そして彼女に、他の者と話してほしくないという独占欲。
僕はこんなにも欲が深い奴だったのか。
僕は深い溜め息を吐き、その考えを振り払う。
あの二人の姿を、振り払う。
そして浮かんでくるカイトへの疑問。
どうしてあの男が緑ノ国にいたのだろうか。
どうして彼女と仲良さげに話していたのだろうか。
彼女とは、どんな関係なのだろうか。
考え出したら止まらない疑問。
答えは、僕にはわからない。
だから、二人は友達、ということにしておく。
その方が自然だし、…そうであって欲しいと思う。
あのカイトが浮気なんて有り得ない、そう自分に言い聞かせて考えを止める。
ただひたすら、無心で流れゆく景色を眺め続けた。
この後、王女があんなことを言い出すなんて、この時の僕には知る由もなかった。
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