二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第三章 ( No.24 )
日時: 2010/12/16 15:40
名前: 双海 (ID: BdM.OEZp)

「じゃあ、緑の髪の女だけでもいいわ!」
 王女のそんな言葉が聞こえたと思ったら
「…わかりました。明日、兵士を緑ノ国に向かわせます。」
大臣は確かにそう言った。
 僕が一番聞きたくなかった言葉を、言った。
「そうしてちょうだい。」
 そして王女は満足げな声を出す。

 僕とテトは顔を見合わせる。
 テトの顔は青ざめていた。きっと僕も同じ風になっているだろう。
 僕達の横をすり抜け大臣は出て行く。
 ぱたん、という扉の閉まる音だけが虚しく響く。
 テトと僕は顔を見合わせたまま動かない。

「…あら、レン!薔薇の花は?」
 少しして王女はやっと僕に気付いたらしく、先程とは打って変わって機嫌の良い声でそう言った。
「…あ、はい。」
 僕は落としたままになっていた薔薇の花を棘に気をつけながら取り出す。
 そして花を花瓶に入れ王女のもとへ持って行く。

「それ、この机に置いてちょうだい。」
「あ、はい。」
 僕はお菓子の置いてある机の上にそっと乗せる。
 その薔薇の花は、王女のきらびやかな部屋にとても合っていた。
 すると王女は薔薇の花をうっとり、とした様子で眺め始める。
 そういった姿を見ると、やはり王女が冷酷だ、なんて嘘であるように思える。

「あの、リン様、お菓子は…。」
 なかなかお菓子を食べようとしない王女にテトが控えめにそう聞いた。
「ああ、持って行って構わないわ。」
「え…。」
 その言葉を聞きテトは驚いた顔をする。
 それは僕だって同じだ。お菓子が好きで残したことのない王女が、そう言ったのだから。
 戸惑いながらも、テトはお菓子の残った皿を持ち、出て行く。
「失礼しました…。」
 そう言いテトは出て行き、二人だけの空間になる。けれど王女は薔薇の花から目を離さない。