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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第三章 ( No.28 )
- 日時: 2010/12/16 17:00
- 名前: 双海 (ID: BdM.OEZp)
返事を待つかのように、僕を見つめる王女。
僕はそんな王女から目を逸らせない。
「…どうして、消してほしいだなんて。」
ふと、口を出たのはそんな言葉。それは、ただの独り言に過ぎなかったのだが。
「あの女が憎いからよ。」
王女は表情も変えず、淡々と答える。
「あの女は、カイトを奪ったのよ。私と彼はただの許婚だったけれど、でも奪ったには変わりない!」
早口でそう言った王女は、今にも泣きそうな顔をしていた。
「それにね、確かに彼は私のことを想ってなかったかもしれない!でも私は彼を想ってた!」
そう言い、王女はバン、と机を叩き立ち上がる。
その拍子に椅子が倒れ、王女ははっとした表情になり、気まずそうに下を向く。
ぐらぐらと揺れる花瓶を僕はただただ眺めることしかできなかった。
王女の荒い息遣いがこの静寂な空間に響く。
「…これは命令よ。」
ふと、王女は呟くが、
「……。」
僕は何も言えない。
「ねぇレン、言ってたでしょう?レンがこの王宮に来た頃、“僕は王女様の命令は必ず守ります”って。」
その言葉に僕の昔の記憶を思い出す。
無邪気な僕と、王女との姿をー…。
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