二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第三章 ( No.31 )
日時: 2010/12/20 17:49
名前: 双海 (ID: BdM.OEZp)

 僕は部屋に戻ると、ベッドに寝転がり、天井を眺める。
 何の音も聞こえない静寂なこの空間に、時間が止まっているのではないか、と錯覚させられる。
 本当に時間が止まっていたらいいのに。
 けれど、時間は僕のそんな気持ちとは裏腹に進み続ける。

 ーそして。

 訪れて欲しくない時は、すぐにやってきた。

 …訪れて欲しくない、か。
 自分で受け入れたことなのに、と僕は自嘲気味に笑った。
 僕は予め用意しておいたナイフをポケットに突っ込む。
 服が汚れないように、フードの付いたマントを被る。

 そして、彼女のいる別荘へと向かうのであった。

 外は薄暗く、僕の存在を隠すのには丁度良い。
 これからすることを考えると、やはり後ろめたい。
 けれど僕は足を進める。
 これは、王女の為だ、と言い訳しながら。

 別荘へ向かう途中、何やら村人達が集まり話をしているのを見かけた。
 皆なにやら物騒な物を持っている。
 その中に、一際目立つ赤い鎧を着た女がいた。
 存在感のあるその女が、この村人達の中心になっているのは安易に想像できた。
 一人の村人が僕の方を向き、慌てて他の村人達の耳元で何かを言うと、村人達は静まり返る。
 そんな村人達に不信感を覚えいろいろ考えた僕だったが、少しして別荘に着いてしまい、その考えは途切れた。

 ーこの時僕が、もっと村人達に注意しておけば、あんなことにはならなかったかもしれないというのに。