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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第四章 ( No.36 )
- 日時: 2010/12/20 21:40
- 名前: 双海 (ID: BdM.OEZp)
生暖かい風が頬を撫でる。
それと同時に彼女の綺麗な髪の毛がさら、と揺れた。
日が沈むのが遅いこの季節は、もう八時をまわるというのに、まだ明るめである。
月明かりだけでも、足りるくらいに。
「……。」
どれくらいこうしていただろう。
何もない空き地で、佇む二人。
彼女は月を眺めている。
僕はまだ、決心がつかないでいた。
「話、ってなに?」
何も言わない僕に痺れを切らしたのか、彼女はそう言った。
呆れられたかな、なんて思いつつ、顔を上げる。
彼女と目が合う。すると、彼女は優しく微笑んでくれる。
ーこの彼女を“消せ”、なんて。
誰か、嘘だと言ってくれないか。
握ったナイフの冷たさだけが、唯一現実味を帯びていた。
「ねぇ、どうしてそんなマント被っているのかしら?」
彼女のその言葉に、自分でもわかるくらい肩が跳ねた。
そして、冷や汗が吹き出る。
「……。」
僕は俯く。
「どうしたの?」
俯いた僕を、不思議に思ったのか、彼女は近寄ってくる。
彼女が近づくにつれてナイフを持つ手の震えが大きくなっていく。
僕はナイフを持つ手に力を込める。
そしてー…
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