二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第五章 ( No.57 )
日時: 2011/01/05 22:11
名前: 双海 (ID: BdM.OEZp)

「っ?!」
 扉を開けた瞬間に、何かが僕にぶつかり尻餅をつく。
 勢い良くぶつかってきたそれを確認する為、正面に目を向けると、
「大臣?」
大臣が、いた。
 思わず大臣?、と疑問系に言ってしまったのも無理がない。

「どうしたのですか…?」

 大臣が何やらおかしいからだ。
 立ち上った僕を、ぶつかったのか、頭をさすりながら不安げに見つめる大臣。
 その大臣は、顔が青ざめている上に、明らかに挙動不審で、何故か村人のような格好をし色々様々な荷物を手に持っている。
 いや、顔が青ざめているのはこの状況下ではおかしくはないのだが、何故挙動不審で、村人のような格好をしているのだろうか?
 それに、手に持っている荷物は何だ。

「い、いや…。何でもない!」
 そう言った大臣の顔はなぜか必死で、不信感を覚えた。
 だが、今はそんなことに構っている暇はない。
「大臣、どうするのですか?」
「何のことだ?」
「村人達ですよ。どうするおつもりで?」
 すっとぼける大臣に、強めの口調で言ってやると、如何にも不機嫌という声で言った。
「兵士は今緑ノ国で、戻ってくるのにも時間がかかるだろう。どうしようもない。」
「…放っておけば怪我人もでると思いますが。」

「そんなの、私が知ったことではない。」

「え、」
「私は私のことで精一杯だ。」
 そう言い放ち、大臣は僕の横をすり抜け、逃げるように走り去っていった。
 一人取り残された僕は、その出来事をすぐには理解できず、遠くなってゆく大臣の背中をただ、眺め続けた。

 しばらくして我に返った僕は、王の部屋へと向かった。
 入ってはいけないと言われてはいるが、きっとこのような状況でなら大丈夫だろう。
 そう考えながら、ただ、ただ歩を進めた。
 大臣のように、逃げなければいいけれど、なとど冷静に考えながら。