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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第五章 ( No.58 )
- 日時: 2011/02/11 17:21
- 名前: 双海 (ID: BdM.OEZp)
しばらくして辿り着いた、王女の部屋の隣にある王の部屋。
この部屋に入るのはこれが初めてではないのだが、やはり躊躇ってしまう。
例え、この部屋に入るのが十回目であっても、躊躇してしまうと思う。
なんせ、このよく手入れされた綺麗な扉だ。
部屋に入ることは愚か、触ることさえ厚かましく思える。
ふと、王女の部屋の扉が目に入る。
これまた、王の部屋の扉に負けないくらいに手入れされた扉。
王女は、どうしているだろう。泣いてはいないだろうか。
ふと浮き出たそんな疑問。
その疑問を頭の片隅に追いやり、今起きていることだけに集中する。
「…よし。」
そんな独り言を漏らし、僕は決心をする。
手を伸ばし、扉を手の甲で叩く。
「いらっしゃいますか、王。」
そう扉の内側に問い掛ける。
だが、その声に反応するものはなく、声だけが虚しく響く。
「…いらっしゃいませんか?」
念のため、もう一度呼びかけるが、反応はない。
いないのだろうか?
そう考えた僕の頭の中は、先程の大臣のこともあってか妙に落ち着いていた。
大臣のことだけではない。
僕の後ろの方から聞こえてくる、未だ慌てる召使達の声が、僕を落ち着かせる。
僕は扉に手をかけ、静かに開いた。
そこには、静まり返った王の部屋が広がっていた。
その光景を見て、落胆した僕。
けれど、少しの希望を胸に僕は部屋へと足を踏み入れる。
辺りを見回してみるが、王の姿はない。
やはり、いないか…。
そんなことを思った僕に、自分で活を入れ、歩き出す。
探してみなくてはわからない。
そう自分に言い聞かせるが、心の奥では諦めてしまっている僕がいた。
部屋の右側にある天蓋の付いたベッドの方へと歩いて行き、レースを開く。
けれど、王の姿はやはりなく。
仕方なく僕は他の所へと探しに歩く。
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