二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

第五章 ( No.59 )
日時: 2011/03/17 18:15
名前: 双海 (ID: BdM.OEZp)




「…いない」
 僕はそう、ひとり呟くと溜め息をついた。
 ベッドも、トイレも、クローゼットも。
 死角になっている所も、絶対いないような場所も探したのに、王はいなかった。

 また、立ち止まって辺りを見渡すが、誰もおらず。
 途端、広い部屋を探し回ったこの足が、疲れたとでも言わんばかりに重くなる。
 僕は部屋の中心に位置する椅子へと腰を下ろした。

 ふと、机に置いてある紙が目に入った。
 その紙は、古臭く、紙の端が折れ曲がっていたりと、この部屋には合わない。
 そして、異様な雰囲気を放っている。

 僕は何の気なしに手を伸ばした。

 それは、何も書かれていない、ただの紙。
 その紙を裏返す。
 すると、二人の抱えられた赤ん坊の写真が現れる。
「…これ」
 その赤ん坊を抱えている人に、僕は見覚えがあった。
 左側に写っている男。その男は、何故か険しい顔をしているが、わかる。
 僕がこの王宮へ召使として来る前に、僕が父親としていた男だ。
 その写真には、今よりも若く写っている。けれど変わらない、どこか優しげな顔をしている男。
 今とさほど変わらない、その顔立ちは、どうみても僕の“父親”であった。

 僕の頬は、久しぶりに見る父親の姿に緩む。
 元気に、しているだろうか。
 そんな呑気な考えが浮かび、僕は慌てて首を降る。

 そして、その横にいる、もう一人の男に視線を移す。
「…王」
 その男は、この部屋に住む、今僕が探している本人だった。
 何年経っても変わらない、その美貌、というべきか。
 この写真に写る王は、今と大して変わらないように思える。

 いや、気になるのはこの二人ではなく、赤ん坊だ。
 僕の頭の中を様々な憶測が飛び交う。
 この二人が抱いているのだから、おそらく…、
「リン様とレン、かしら?」