二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ▽ 鬼爪 【戦国BASARA3】 ( No.19 )
日時: 2011/01/09 00:08
名前: 蓮羽 ◆8ylehYWRbg (ID: vtamjoJM)
参照:            冬休み\(^o^)/オワル


▽ 六

「大将が那塚の旦那に負けた!? 本当に!?」
「ああ」

夜。
今日用意された真田幸村の部屋にて、驚きの声をあげたのは猿飛佐助だった。
佐助は驚きで目を丸くした。

幸村が稜弥と手合わせをしたいと願っていたのは知っていたが、勝敗はまだ知らなかった。
今日起きたことなのだから、知らなくて当たり前なのだが。

武田信玄が病に倒れてから、幸村は本調子を出せずに居た。


「毎日水底にいるような夢を見る」、と幸村が言うのもきっとそのせいなのだろう。

それでも、佐助は幸村が那塚稜弥に負けたことに少し驚いていた。
一時は日本一の兵と自負していた幸村を負かす? そこまで豊臣の番犬は凄まじいのか?

「(……いっちょ調べてみますか)」

稜弥の情報は数が少なく、薄い。
いつか敵対する時のためにも、佐助は稜弥の事について調べてみることにした。




次の日の朝。
もう辰の初刻(午前7時)だというのに、まだ布団の中でスヤスヤと寝ている稜弥を、佐助は天井裏からそっと覗いた。

「(そんな強そうに見えないけどねェ。早朝から鍛錬してるわけでもなさそうだし、やっぱ真田の大将が那塚の旦那に負けたのは本調子じゃなかったからかもな)」

もう調べる気力を失くし始めていた、その時だった。
怒りに満ちた叫び声が、佐助の耳を劈いた。

「りょおおおおおおおおおおおおおやああああああああああ!!! いつまで寝ているつもりだああああああああ!!!」
『うおわああああああああ!!?』

いきなり襖が乱暴に開き、どうやら恐惶で走ってきた石田三成が鬼の形相で入ってきた。
稜弥は一瞬で目が覚めたらしく、シュバッと布団から飛び起き、後ろに後ずさる。

「稜弥……貴様には学習能力というものが無いようだな…………」

三成は稜弥にゆっくりと歩みより、ギロリと鋭く目を動かした。

『し、仕方ないじゃんか!! 昨日も夜遅くまで見回りしてたんだからさ!! これで3回目の怒号だからな! 俺の眠りを邪魔しやがって!』

稜弥は焦りながらも抗議する。
昨日もどうやら夜間の警備で忙しかったらしく、眼の下にはうっすらだがクマが出来ていた。
稜弥の寝ていた布団の枕元には、血で汚れた鬼爪が無造作に置いてあり、乱闘になりかなり稜弥が疲弊したのを分からせた。
その鬼爪を横目で見やり、状況を理解した三成だが、それでも容赦しなかった。

「ということは2回も私が貴様を起こしたことを知りながら無視したということだな?」

稜弥はこの三成の一言で、先の自分の発言が墓穴を掘ったことに気づいた。

『い、いやいやいや違う! 違うよ!! 3回目っていうのは数えてたんじゃなくて、その、推測!! 推測だから! どうせ俺の事2回ぐらい起こしたんだろうなーっていう……』

この言い訳はあまりにも苦しかった。
最早逃げ場を失った稜弥は、もう笑うしかなかった。

『…………ごめんなさい、無視してました』
「……ッきさまああああああああああああああああ!!!」
『あー!!! ごめんなさい!! ほらね、素直に謝ってもこれだよ!!! ちょっ、斬首しようとしないで!! ごめんなさいってば!!』

そんな2人の掛け合いを始めから天井裏で見ていた佐助は、呆れ果てた様子だった。

「……俺様の心配、無駄骨だったのかも」


▽ つづく