二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ▽ 鬼爪 【戦国BASARA3】 ( No.7 )
日時: 2010/12/16 22:41
名前: 蓮羽 ◆8ylehYWRbg (ID: vtamjoJM)
参照:                  元、帽子屋ですvv

▽ 参

『……ここが毛利さんの城? え、何コレでかい、何なのこれ』

俺がぽろっと言ってしまうほど、郡山城はドでかかった。
俺こと那塚稜弥は、刑部の言いつけで毛利さんの家に書状を届けに来た。

……でかい、郡山城デカいよ!! 毛利さんボンボンか!? 噂で聞くと兜がオクラっぽいって言われてるけどボンボンか!?

門前で予想外のデカさに感服してると、門の前で警備していた毛利さんとこの兵達から棘のような視線を感じてきた。
あっ、そうだそうだ、俺の役目は書状を届けること!!

『す、すみまっせーん。あの、俺石田軍の大谷吉継から毛利元就さんへ書状届けに来たんですけど、どうすればいいですかねー、え、えへへ』

こういう事はあまりしないから、ちょいちょい不自然に声が震えた。
俺がそう作り笑いをしていると、兵士達は怪訝そうな声でひそひそ話をし始めた。

いやあああキツいいいい俺こういう状況無理いいい!!
怪しまれてる? 俺怪しまれてる? そりゃそうだよねだって女のくせに男のなりしてるからね!!

直立不動になり、額から冷や汗が吹き出てくる。
大丈夫かな、俺もしかして殺されるかな、どうしよう、刑部が俺に頼んだのが間違いだったよね、そうだよね俺悪くないよね

なんてありもしない心配で心が押しつぶされそうになったとき、
「那塚殿、で宜しいか?」
「ようこそおいで下さった。毛利様のもとへご案内します」

と、会議が終わった兵士達の内2人が、半笑いでそう言ってくれた。

俺もただただ苦笑いで、『あ、あざーっす』と言うしかなかった。




「それでは、こちらにお入り下さい」

俺が連れて来られたところは、城の最上階のなんか一番偉い人が入ってそうな部屋の前だった。
いかにもお偉いさんがいるな、と感じて、再度俺は緊張しだす。
何故刑部は俺に頼んだんだ本当に。帰ったらミカン4個謙譲してもらう。絶対に。

連れてきてくれた人も、俺にそういい残すとそそくさと立ち去ってしまった。酷い、入るまで見送ってくれたらいいのに!
どうするんだ、こういう時普通の人はどうするんだ? えーと、えーっと……

俺は襖の前であたふたと慌てた。それはもうガチで。
襖どうやって開ければ失礼じゃないの? 座るの? 立つの? 蹴り倒すの? 蹴り倒せばいい? 襖蹴飛ばして野生的に入っていけばいい?
あわわわと焦りに焦って、結局俺は恥を捨てて毛利さんを呼ぶことにした。ここで。
いいさ女なんてもう捨てたから! 一歩踏み出せ俺!! すみませんって大きな声で叫べ俺!!

ようやく決心して、生唾をごくりと飲み込んだ。
大きく息を吸って、いざ!!

『すみまッせーん!!! 毛利さーん!!! お使いに来たんですけどいらっしゃいますかー!!』

そう、俺が全力で言い放ったときだった。
2秒も無く襖が開いて、中から毛利さんらしき男の人が見下すような目つきで出てきた。

あ、間違った、やり方間違った!
悟ったときはもう遅かった。

「大谷から聞いてはいたが…… 貴様、礼儀と言うものを知らないのか」

毛利さんは物凄い呆れたご様子で、マジで俺を見下していた。



部屋には通してもらえたものの、もう俺は半泣きだった。
とりあえず正座して毛利さんと向き合うけど、怖くて目が合わせられなくて、さっきから俺の目はざばんざばん泳ぎっぱなしだ。

偉そうに肘掛に持たれて、観察するように俺を見てる毛利さん。怖い。
俺は腿の上で緊張を潰すように拳を握った。

最上階、というだけあって、城下の様子が一望出来る。
城下を挟んで見える瀬戸内の海が綺麗だった。中国は南の方だから、まだあまり寒くない。
だから入ってくる風は丁度良かったんだけど、この状況だからそう余裕に楽しめない。

暫く沈黙が続く。何、俺が切り出さなきゃいけない状態?

『あ、あのっ、刑部から、じゃなくて大谷から書状預かってきてるんですよ!! これ!』

意を決して俺はそう毛利さんに伝える。
袖から「毛利殿へ」と書かれた書状を出して、スス、と前に出す。

「聞いておる」

毛利さんはそう冷たく返事した。怖い。
その返事を聞いて、俺はある事に気付いた。

『あの、恐れ多いんですけど質問いいですか?』
「なんぞ」
『さっきも゛大谷から聞いていた゛って言ってたじゃないですか。刑部と前から交流あったんですか?』

毛利さんは少し眉をひそめた。

「大谷め、事情を説明しておけというのだ……」

『? 何か言いました?』

小声で毛利さんが何か呟いたけど、俺には聞き取れなかった。

「大谷の方から同盟の提案を以前から受けていた。その際、石田軍の情勢を聞いたまでよ。番犬と呼ばれる貴様にも、興味があったのでな」

刑部から同盟の提案か……
俺そんなん聞いてないんだけどな。三成は知ってるのかな。
あ、朝の会議でそんなの言ってた気がしないでもない!! 俺多分寝てた!!

『同盟は結ぶんですか?』
「もう結んだ」
『なんとっ!?』

知らんかった、俺知らんかったぞ!! 駄目だちゃんと軍議は居眠りしないようにしないと!!
俺はそう堅く誓った。次の日には緩んでるんだろうけど。

『……じゃ、俺そろそろ帰りますね。ちゃんと目的果たしましたからね俺!! 失礼があったとか刑部に告げ口しないでくださいね!!』

俺はスクッと立ち上がって、そう毛利さんに釘を刺してから、少しだけ急ぎ足でその部屋を後にした。

……威圧感、すごかったなぁ。




稜弥が出て行ったあと、毛利は大谷からの書状を開いた。
書状には達筆で、「愉快な奴だろう」とだけ書いてあった。

以前、大谷との密約中、稜弥の話が2人の間で出てきたことがあった。



「毛利よ、主に紹介したい奴がおる」

突然そう切り出したのは大谷の方だった。
ゆらりと揺らめいた蝋燭の炎が、毛利の顔を照らす。

「面白き犬よ。主もさぞ気に入ることだろう」

馬鹿な。我が人を好くなど。
毛利はそう言いたかったが、以前から興味があった「豊臣の番犬」についてはそう断言できなかった。

「われも三成も、あやつだけには敵わなんだ」

大谷はヒヒッ、と怪しげに笑った。




恐惶三成にも沼地の蝶からも気に入られる「番犬」。どれだけおかしな奴なのだ。
そう気になっていたところへ、大谷が寄越したそれは、どうも自分の想像とかけ離れていた者だった。
礼儀知らずで、異様に自分に怯えていた。そこらの兵と変わらない。
やはり番犬といえども、それは「石田軍」内だけどの話か。

毛利は失望した眼で、先程稜弥が座っていた場所を見つめた。


▽ つづく



【郡山城】
毛利元就が拠点とした広島県のお城。
行った事無いから内部は想像だよ!!