二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ▽ 鬼爪 【戦国BASARA3】 ( No.8 )
日時: 2010/12/19 23:08
名前: 蓮羽 ◆8ylehYWRbg (ID: vtamjoJM)
参照:                  元、帽子屋ですvv

▽ 四

早朝、毛利のもとから帰ってきた稜弥を出迎えたのは———なんか暑苦しい人だった。

「おお!! 貴殿が豊臣の番犬と名高い那塚稜弥殿で御座るか!?」
『へっ!? えっ!?』

城に帰ってくると、休む暇もなく大広間に連れて来られた稜弥。
「石田殿も大谷殿もそこにいらっしゃいます」と言われたので、納得して連れてこられたのだが。
大広間の襖を開けると、左側に三成と大谷と数名の軍幹部、右側に赤い鉢巻をした若者と明細柄の服を着た橙色の髪の男座っており、左右向き合う様に座っていた。
どうやら会議中のようだった。

その若者は稜弥が入ってくるなりすくっと立ち上がって、稜弥の目の前に近づきぱっと手を取った。
稜弥は三成達に「帰ってきた」と伝える間もなくそうされたので、動揺を隠し切れなかった。
するとその稜弥の表情に気づいた若者は、稜弥を手を離しその場に座った。

「某、甲斐武田軍からこの石田軍との同盟を結ぶために馳せ参じた、真田幸村と申す者!! 宜しくお願い申し上げる!!」

そう言って深々と頭を下げられ、稜弥はよりいっそう焦る。

『え!? え!? あのっ、とりあえず顔上げて! 俺今状況についていけない!!』

稜弥の焦りようを見て、楽しそうに笑う大谷。

「して稜弥、毛利にはしかと渡したか?」
『あ、うん。何かあの人怖かった』

とりあえず稜弥は三成の横に座る。
三成は煩わしげに稜弥を見やり、また視線を幸村に戻した。

『……ああ、甲斐の若虎さんか!! どうりで聞いたことある名前だと思った』

稜弥はやっと合点がいったというような表情で、幸村を見つめる。
覚えてもらっていて光栄だ、という面持ちで幸村は稜弥に一例した。

『でも、またなんで同盟を?』

稜弥のその問いに、幸村は立ち上がって叫ぶ。

「無論!! 家康殿と戦う為で御座る!!」

東照権現、徳川家康。
豊臣を裏切り、豊臣秀吉を討った男。
絆を説き、人々と結ぶ絆を尊ぶ男。
三成と稜弥が、恨み、妬む男。

稜弥は家康の名前を聞くと、顔を顰めた。
横の三成も、恨めしそうな表情だった。

『……そっか。まぁ味方は多いに越したことはないんじゃない、三成。ねぇ刑部?』
「その通りよ。真田、願ってもない申し入れ、承る。よいな、三成」

稜弥と大谷はそう三成に促した。
三成は少し黙った後、大谷に「貴様に任せる」と呟いた。
そして、幸村に向かって低い声音で呟く。

「同盟を結んだからには、絶対に私を裏切るな。それに、家康を討つのはこの私だ」

幸村は三成を見据え、静かに

「承知した」

と答えた。

こうして石田軍と武田軍の同盟は結ばれた。
武田軍は今からここ大阪城に移り、軍議等を行う事になった。
簡単に言えば、真田幸村等武田軍は大阪城に住むという事。
これから宜しく申し上げる!! と熱くまた頭を下げられ、稜弥もまた焦った。



『何か騒がしくなりそうだな』

稜弥はそう言いながら大谷の部屋の炬燵にあたる。

「そうよなァ。五月蝿いのは御免こうむるが」

大谷は数珠の手入れをしながら、そうヒヒッと笑った。

最近の徳川の情勢と言えば、伊達と雑賀の介入という衝撃的な事実が発覚した。
伊達には独眼竜・伊達政宗が居る。真田幸村の好敵手であり、六爪流などという常識破りで有名だ。
雑賀には雑賀衆三代目頭領、雑賀孫市が居る。雑賀集は生粋の戦闘民族であり、主君を持たない契約式傭兵組織である。

そこでの武田軍の同盟は、大谷に言うとおり願ってもない申し入れだった。
力が多いことに越したことはない。今の状態じゃ徳川に勝てない。
石田軍も、早に武力を高めなければならなかった。

『難しいのはよく分かんないけど、戦ほど面倒な事は無いよね』
ミカンを剥きながら稜弥はぐうたれる。

「勝たねば意味が無いゆえ」
大谷が布で綺麗に拭いた数珠が、ふわりふわりと宙に浮かんだ。

それはそうだけど、と稜弥が炬燵に突っ伏した、その時だった。

スパァン!! と襖が開き、「稜弥殿ォ!!」と熱く叫びながら入ってきた男が居た。
真田幸村だ。

稜弥と大谷は驚いて目を丸くした。宙に浮いていた数珠が床に落ち、食べ損ねたミカンがぽろりと手から零れる。

「某と勝負してくだされェ!!!」

『は!?』

幸村の背からは、熱く燃える炎が見えた。


▽ つづく