二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 刹那の欠片 【REBORN!】 特別番外編up! ( No.40 )
日時: 2011/05/10 22:40
名前: 葵 (ID: w731Gq1j)

 7話 精鋭来る!


次の日。
ツナは何度目か分からない深い深い溜め息を漏らしながら、登校していた。
理由は勿論、夜と本気の戦いをしなくてはいけないからだ。
本気の戦い———リボーンは死ぬ気で戦えと言っていた。
全員そこそこやる気だったから、更に荷が重い。

———俺…辞退したい。
逃げるのは無しなの?
というか…其れ以前にリボーンが逃がしてくれる筈無い…。

そう考え、更に学校に行く足取りが重くなる。
後ろから誰かが歩いて来る足音がしたが、ツナは振り返らない。
どうせクラスの奴等か、獄寺か山本かと思っていたからだ。
其の人物に肩を叩かれ、ツナは仕方無く振り返る。


「…誰!?」

「あれ? 俺の事、知らない? 俺はお前と同じクラスの、紀川 雪浪」


ニカッと愛くるしい笑みを浮かばせ、雪浪は白い歯を少しだけ覗かせた。
ツナは正直、クラスのメンバーを余り覚えていなかった。
普段自分を馬鹿にするばかりのクラスの皆。
そんなクラスの皆が、好きでは無かった。
とはいえ、嫌いにもなれないのだが。


「雪浪…君?」

「あぁ! 駄目同士仲良くしよーぜ? …あ、そうだ。そう言えば新しく来た教師の…黒山先生? 結構綺麗だよな!」


いきなり馴れ馴れしい雪浪に少し違和感を感じたものの、ツナは直ぐに打ち解けた。
こんなに良い人が、此のクラスにいたのかと思う程。
話を聞けば、雪浪もあまり成績は良くないのだと言う。
文系を除き、他は駄目だと聞き、ツナは少し親近感を覚えた。
獄寺はツナを慕い一緒にいてくれるが、獄寺は頭が良い為、逆にこっちが足手纏いなのでは…とツナは思う。

———山本みたいにニコニコしててくれたら、こっちも気が楽かも…。
今は色々あって、面倒臭いし…。

適当に相槌を返しながら、ツナは微笑む。


「あ、そういや俺…提出物出してない! 朝迄に提出だったよな…。間に合うかな!? ツナ、悪いんだけど先行く!」


嵐の様に去る雪浪を見つめながら、ツナは雪浪に手を振った。
雪浪自身は、手を振られたことすら気付いていないが。
やらねば殺される———…。
まだまだ若いツナには、人の生死を握る程の権力を掴むには速過ぎたのだ。
ツナの心に重くのしかかるのは、戦わねばならないという“義務”だった。


———————————


「悩んでるわねぇ、ボンゴレ十代目」

「悩まずに人を余裕で殺す奴など、ボンゴレの頭にはいらないさ。悩んで、悩んで———…いつしか答えが出る。人生とはそんなものだ」

「…そんなもの、かしらね?」


一焔と明日香が若干大人びた会話を交わす。
彼女達は二人共、ボンゴレの特殊暗殺部隊———キュリアの精鋭である。
ヴァリアーをも凌駕すると噂されているが、定かでは無い。
実際に戦うとなると、多くの被害が想定されるからだ。
キュリアは主に、裏世界で見付かったばかりの属性を多く管理している。
普通の属性よりも力を持ち、普通の属性とは違う能力を持つキュリアの精鋭。
一焔は雨の属性だが、他の奴等などとは比べ物にならないのだ。


「にしても…黒山 夜って奴…侮れないわよ?」

「私もそう思う。属性も今までと違う属性だから…迂闊に手も出せない」

「あいつの話じゃ、獄寺のボムの威力を無効にしたらしいわ。無効にする能力…かしら?」


一焔が少し困った様に頭を掻く。
新しい属性の時に必ず行う、偵察である。
新しい属性であると、どの様な能力を使えるのかが不明なのだ。
其れで、キュリアは全勢力を上げて相手の能力を調べ尽くす。
調べ尽くした時には精鋭を送り込み、無理矢理でも捕縛するのだ。
ある意味犯罪である。
後ろに人間の気配を感じ、明日香と一焔は振り返った。
見慣れた顔が、其処にはあった。


「其れは違う」

「何故そう断言出来る、雪浪」

「何故? …さぁ? 俺が根拠あって発言した事、ある? 俺は只、そう思ったからだよ。其れに…あれと似た様な能力を、前いたマフィアで見た事がある」


其の言葉を聞き、待ってましたと言わんばかりに二人は目を輝かせた。
もう鬱陶しい張り込みや、聞き込みをせずに済むからだ。
二人の勢いに少々怯むが、雪浪は口を開———…こうとして、何者かに塞がれた。


「“闇”だよ。全てを飲み込み、吸い尽くす能力」


ニコッと笑みを覗かせるロキ。
無論ロキもキュリアの精鋭の一人である。
元々ツナを守る為に派遣されていたキュリアだった為、皆学校付近で仕事に就いている。
正直面倒だ、と皆が声を揃える。


「其の他にも、多様性はあるみたいだよ? 相手の一部分を使えなくさせる、とかさ…」

「じゃあ、闇に反抗出来るのはロキ…。お前の“光”じゃないのか?」

「分かってないなぁ、明日香は!」


そう言われ、明日香は眉間に皺を寄せた。
普通に考えればそうだろう。
“闇”の反対は“光”。
“光”の反対は“闇”。
“光”があって、“闇”が出来る。
“闇”があるから、“光”も生まれる。
両極の二つの存在は、お互いに弱点を握り合っている、と言っても過言では無い。


「何が違うのよ ?明日香の言う事…筋は通ってるわよ?」

「“闇”は圧倒的に不利なんだよ。“光”の他にも“雪”や“風”…。更には“雨”の最強戦士まで揃い踏みのこっちには、勝気があるね」

「結局は、“赤狐”を私達が闇に葬り去るのか?」

「そうしたい…否、仲間にしたいかな。けど、俺等が出る幕は無いよ。きっとアルコバレーノが処理するしね」


また仲間が増えないのか、と明日香は不満そうに呟いた。
仕方無いよ、と雪浪が明日香を宥める。
一焔と雪浪と明日香が去ってから、ロキは夜を見つめた。


「まだまだ君には興味があるよ」


そう呟き、ロキは其の場を後にした。