二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 刹那の欠片 【復活】 20話up! ( No.115 )
- 日時: 2011/04/27 22:54
- 名前: 葵 ◆ufwYWRNgSQ (ID: 7jw4zwan)
21話 雨戦の始まり来る!
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深夜。
今日はキルと山本の対戦———いわゆる雨戦である。
「本日の場所は1〜3階までの教室を使った、アクエリオン……です」
「アクエリオン………又しても海洋生物は出るのかな?」
ロキが少し楽しげに微笑む。
はい、とチェルベッロは答えた。
海洋生物………いわゆる、鮫等の獰猛な生物の事を言う。
ある一定の水域にまで達すると出て来る、死の番人の様な物だ。
「ま、待って下さいよ………なら、負けたら相手は死ぬって事ですか……?」
「いえ。万が一ある一定の水域まで達すれば、の話です。水域が達するまでに相手を負かせれば、海洋生物は出て来ません」
エルの問い掛けにチェルベッロはサラリと言うが、中々難しい話である。
以前ヴァリアーと戦ったままの場所な為、多少は山本が有利ではあるが……。
やはり、キュリアの強さは異常である。
ランボがエルに勝てた事を奇跡と称しても、可笑しくは無いだろう。
「まぁ、其れまでに倒せば良いんだろ? 何とかなるって!」
「おまっ………野球馬鹿の異名を持つだけの事はあるな、此の馬鹿!」
「極限にファイトだ!」
「…………頑張れ」
雲雀(群れるの嫌い)とランボ(寝る時間だから)が不在なものの、いる守護者からの応援らしき物に山本は頬を綻ばす。
ツナだけは純粋に応援する事が出来ず、唇を噛む。
リボーンに聞いた話がどうしても気になって、実はツナは昨夜寝る事が出来なかったのだ。
———もし山本が此れで負けたら…多分半殺しじゃ済まないよ……。
昨日エルさんがやられて、キルって人めちゃくちゃキレてたし……。
じゃあ山本の負けは…………“死”を意味する?
山本達や皆の死に顔が思い浮かび、ツナは首を横に振った。
「十代目? どうかなさいましたか?」
「う、ううんッ! 何も無いよ!」
不意に視線を感じ、ツナは後ろを向く。
雪浪がニコニコと笑いながら、ツナを見つめていたのだ。
妙な威圧感に押され、ツナは苦笑いを浮かばせる。
瞬間、雪浪がツナに歩み寄って来た。
———ひぃ……来た!?
何で!?
内心逃げ出したい気持ちでいっぱいだったが、ツナは迫って来る雪浪をきつく睨み付けた。
雪浪はツナの目の前までやって来て、苦笑いを溢した。
「ツナ、悪いけど………俺、此の戦い見たくないんだよな。一緒に行かねぇ?」
「え…? キルって人が戦うんでしょ? 見届けなくて良いの?」
「…まぁ、お偉い十代目の意見を聞きたくてさ。守護者抜きで、話したいんだ。キュリアだって分かってから……まともに話してねぇだろ? 早くしねぇと戦い始まるぜ?」
半ば無理矢理、ツナは雪浪に引き摺られて行ってしまった。
獄寺がツナがいない事に気付いたのは、数秒後の事である。
「じゅ、十代目は!?」
「沢田なら紀川に連れ去られて行ったぞ。……だが心配するな。直ぐに帰って来ると、紀川が言っていた」
夜はサラッと要件だけを述べ、チェルベッロ側に視線を戻す。
チェルベッロは其れを確認すると、静かに述べる。
「キル・リオンvs山本 武。アクエリオンの中に入って来て下さい」
「……お兄様…死なないで下さいね…」
半ば祈る様なか細い声で、エルは静かに呟いた。
___雨戦…開始!___
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「ちょ、雪浪君! 何処まで行くつもり!?」
「ん? あぁ、悪いな………なぁ、ツナ」
「何?」
「お前は…罪悪感とか無いのか?」
雪浪に聞かれ、ツナは押し黙る。
罪悪感を感じていないと言えば嘘になる。
だが、自分如きが嫌だと…無意味な争いは嫌いだと言っても、此の争いが終わる事が無いとツナは理解していた。
全ては九代目の意思の元に動いているのだから。
「答えてくれよ、ツナ。いや……十代目。俺達のしてる事は正しい事なんかじゃ無いだろ? 同世代の友達が…マフィアだなんてな」
「罪悪感は…抱いてる。俺がもし普通の一般人だったなら、きっと俺は獄寺君や山本とすら知り合う事は無かった。だからこんな危険な目には遭わせずには済んだんだ。………けど、同時に感謝してるんだ」
「……何故?」
「だって、多分皆に会わなかったら、俺はダメツナのまま…一生を終えてた。こんな世界とは孤立無援でむしろ嬉しいけど……大切な物も手に入れた。だから……」
瞬間、雪浪がツナの服の襟を掴み、近くの壁にツナを押し付けた。
痛みと驚きからか、ツナは目を丸くさせる。
息がしづらい故に雪浪の手を掴み、何とか少しでも酸素を手に入れようとツナはもがく。
が、今のツナはハイパーでは無く、普通だ。
雪浪の圧倒的とも呼べる力のせいで、雪浪の捕縛から逃げる事すら出来ない。
「やっぱり………ツナと俺との差は其処だ。初めからマフィアという世界に浸ってる俺に……お前等は眩し過ぎる。お互いの助け合い…俺達は禁止されてる行為なんだよ、其れは。ツナ、お前に十代目になる資格は無い。悪いけど………お前には無理だ。お前は…優し過ぎる」
人を殺す事そのものに躊躇する様では、マフィアなんて職業では生きていけない。
其れは雪浪が此の世界で生き延びる為に得た、一つの考えであった。
其れ故か……雪浪は以前からツナを羨ましいと感じていた。
弱肉強食とはよく言ったものだ、と雪浪は嘲笑する。
「雪………な…み君…ッ」
「苦しいだろ、ツナ。此れは全部…俺の死んだ同士達の苦しみだ。ツナは知らないだろ? 大切な奴等を失う………苦しみや悲しみや憎しみ」
雪浪は今にも泣きそうな瞳で、ツナを見る。
———分からない……分からないけれど、雪浪君が悲しんでるのは分かる…。
雪浪の手の力が緩まり、ツナは雪浪を突き飛ばし、一息つく。
「俺には、分からないッ! けど、いつか雪浪君みたいな人とも、理解し合える様になりたい! だから……ッ」
雪浪はツナの言葉を最後まで聞かずに、ツナに背を向けて歩き出した。
雪浪からすれば、只の偽善でしか無いのだろうが。
「協力…して欲しいんだよ、雪浪君みたいな人に!」
其の言葉が雪浪に届く事は無かった。