二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 刹那の欠片 【REBORN!】 23話up! ( No.130 )
- 日時: 2011/04/08 13:24
- 名前: 葵 (ID: GSWgO850)
24話 海洋生物来る!
「十代目……」
獄寺は、静かに…むしろ祈る様に呟いた。
目の前には大きなテレビがあるのだが、其処で行われている事は最早“制裁”にしか見えなかった。
残虐性に溢れ、緑色の綺麗な瞳に籠もっている感情は、明らかに憎しみだった。
キルの半ば拷問の様な仕打ちに対し、山本は倒れてしまう方が楽であろうに、何度でも立ち上がる。
瀕死と言っても過言では無い程の傷に、いつ倒れてもおかしくない程の血液を流す山本。
かろうじて急所などに当たる事は防げているものの、此れだけ蹌踉(よろ)けていれば、いつ当たってもおかしくはないだろう。
「キル……彼奴…何をムキになっているんだ…」
雪浪はテレビの中で続けられる凄惨な戦いに、思わず息を飲んだ。
雪浪達すら今までに見た事など無かった、キルの残虐性。
今まで一緒にいたエルでさえ、此れ程キルが残虐な行いをするのは、孤児院を壊したあの日以来だ。
「…ッ…誰か……誰か兄様を止めてぇえぇ…ッ!」
エルの悲痛な願いは、誰にも叶えられる事は出来なかった。
———————————(キル目線)
目の前で倒れている相手…ボンゴレ雨の守護者は………もう限界だろう。
なのにどうして、こんなに容赦無く攻撃を打ち付けているんだ、俺は。
止まらない、のか?
思い通りに体が動かなくなり始めている、のか?
兎に角、此のままの状態が続く事は俺にとっても、相手方にとっても、好ましい状況ではない。
「山本 武…だっけか?」
頭を踏み付けながら、俺は言う。
相手は意識が飛んでいるのか、ピクリとも動かない。
「……早く、リタイアするって言えよ…」
其の一言だけを…其の一言だけ言ってくれれば、お前は此の痛みからも解放される。
何度もそう促した。
けれど、お前は何度も首を横に振って、否定した。
俺は別に、お前を殺す為に此の戦いに挑んだ訳では無く、エルの仇を討つ為に此の戦いに本気で挑んだ。
だから、別に俺にはこいつを殺す必要なんて無い。
だけど………。
こいつがリタイアすると言わない限り、俺には殺さずに済む方法が分からない。
だから、早くリタイアして欲しい。
「…ッ…言えよッ!」
そう叫ぶと、相手が目を覚ました。
俺を蔑む様に笑うから、俺は思わず顔から足を離して、後ろに退いた。
相手はもう体なんて動かない筈なのに、動かせない体の筈なのに、無理に体を動かす。
相手の彼方此方の傷跡から、ポタポタと血液が流れ出ている。
「…別にお前は無理して戦う必要、ねぇんだぞ……? どうして、ボンゴレのこんな茶番に付き合うんだよ!? お前は、将来を約束出来る程野球が上手いんだろ!? そっちに行っても良いんじゃないのかよ!」
俺達は此の道の他に選択肢なんて物は無くて……成り行きで此の茨の道を走って来た。
けれど、こいつにはまだ…夢も希望もあって、選択肢だってある。
なのに何故、こいつが此の道を選ぼうとしているのか…俺には理解出来なかった。
虚ろな瞳で相手は俺を見る。
パクパクと、口が微かに動いた。
「……“友達”、だ…から……」
そう相手が言った瞬間。
アクエリオンの中にある、赤いランプが点灯した。
外側から、チェルベッロの非情な声だけが聞こえた。
『一定の水域に達しました。今から、海洋生物をアクエリオン内に放ちます』
其の声を聞くや否や、相手は床へと倒れ込む。
俺の、勝ち?
『…どうやら、キル様の勝利が確定した様です。キル様、早く上の階へとお上がり下さい』
「………こいつは…?」
『其の方は敗者とみなしましたので、命の保証は致しません。キル様、海洋生物が血の匂いに誘われて、此方に近付いています。早くお逃げ下さい』
……そうか。
俺の勝ち、なのか。
自然と、頬が綻んだ。
けれど……胸の内のモヤモヤした気分は消えない。
そうか。
分かった。
此のモヤモヤした気持ちは…。
「お前を、倒せなかったからなのか……」
今まで、誰一人として俺に逆らう者はいなかった。
精々施設の奴等位だったが、其奴等はもう此の世の中に存在していない。
雪浪達は仲間として認めているから、もう逆らってくれたって構わない。
只…敵に命乞いされなかったのが、初めてだったんだ。
悔しいのか、悲しいのか、苦しいのか。
分からないけれど、此れだけは言える気がする。
「俺は、お前と“友達”になりたいんだな」
相手…否、山本に噛み付こうと飛び掛かって来た海洋生物に向かって、暗器である刀や剣などを刺す。
怒りの余りか、海洋生物は俺を狙ってやって来た。
海洋生物に向かって、哀れんだ様な瞳を覗かせる。
「…お前、昔の俺みたいだ」
牙を見せて襲いかかって来る海洋生物に、自身の持っている暗器の全てを出し尽くし、攻撃した。