二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 刹那の欠片 【REBORN!】 26話up! ( No.136 )
日時: 2011/04/19 21:55
名前: 葵 (ID: 7jw4zwan)

 27話 始動来る!


———————————(ツナ視点)


俺達も……たまたま違っただけであって、雪浪君と同じ様な運命を辿っていたのかも知れない。
此の平和な世界を見た事の無い雪浪君達には、俺達はどう映っていたんだろう?

嫌悪感?
羨望感?

いずれにせよ、俺達は雪浪君達には“邪魔者”でしか無いんだ。
いきなりボンゴレの十代目候補として現れた俺は、特に。
キルって人も、エルって人も、雪浪君も、ロキって人も、明日香って人も、一焔って人も、彗って人も。
本心ではきっと……平和を願っていた筈なのに。
たった少しの運命のずれから、俺達は違う運命を辿っていたんだ。



———————————(夜視点)



……噂で聞いた通りの、善人主義者。
徹底した善人主義者……其れが、癇に触る。
腹が立つ。
何故皆皆……ボンゴレファミリー共に考えを改めさせられているんだ!?
訳が分からない。
私には理解出来ない、“友達”だとか……“仲間”だとか……そういうのは嫌いだ。


「……お前もそうなんだろう?」


私の後ろで静かに佇む、彼奴。
男はニッコリと笑顔を覗かせてから、一緒に連れている女の頭を撫でる。
女は其れに一切表情を変えず、無表情のままだ。


「まぁね? ま、俺にも痛々しい“友情”とか、生温い“青春”とか無いからさぁ、少し羨ましいかも♪」

「あんまり彼女を苛めない方がよろしいのでは?」

「……兎に角、だ。お前等に任せたい事がある。万一キュリア全員がボンゴレの下種共に心を開いてしまう様な失態があれば、お前等が殺せ。彼奴等は仲間じゃないんだから、其れ位簡単だろう?」


其の一言に、女が絶句した。
男は至って普通そうな顔で、むしろニコニコと微笑んでいた。

仕方無いんだよ。
“此れ”は私のボンゴレ壊滅計画の為に、役立って貰わねばならない、一つの儀式の様な物。
万一計画が狂えば、私はボンゴレに加入し、憎きボンゴレの為に働かねばならない。
其れだけは……其れだけは絶対に嫌だ。


「あ……アンタ、今何て……ッ」

「言葉通り。キュリアの奴等が万一ボンゴレに心を開く様な事があれば、キュリア幹部を全て殺す」

「……ふざけ、やがって……ッ!」

「止まれ!」


私に殴りかかって来ようとする女を、男が叫びで制止する。
渋々拳を収め、女は怒りの余り肩を震わせている。
男は只、静かに……。


「其の作戦、乗ったよ」


ニッコリと笑みを浮かばせて、微笑んだ。



———————————(エル目線)



私が……私があの雷の守護者を倒せていれば、少しでも未来は変わっていたのだろうか?

片方の腕が無くなった兄様の姿。
布団の上からでも分かる程、腕の無い姿は痛々しく見える。
目が覚めないから、点滴だけで命を繋いでいる兄様。
私の大好きな……愛している兄様。


「……兄様……ッ」


一人で残されるのは大嫌い。
いつも貴方は私に笑い掛けてくれていたのに。
もう、見えない。
あの笑顔も、私にだけ見せる弱さも、儚さも……。
兄様が命を賭けてまで助けた、あの山本とか言う男は……価値のある男なのですか?
私にはどうしても彼奴に価値なんてある様には見えなくて。
彼奴の姿を見ると、衝動的に殺してしまいたくなる。


「一人にしないで下さい、兄様……死ぬのなら、私も一緒に連れて行って……」


ベッドに横たわる兄様に、静かに言う。
瞬間。
ガラッと病室の扉が開き、其処には……。


「山本……武……?」


___山本 武がいた。

私がいる事に気付き、少しだけ気まずそうに笑いながら、兄様の近くに置いてあった花瓶を持つ。
片手には、花。
花瓶に水を入れ、山本は花瓶に花を入れた。
花瓶を兄様の横に置くと、山本は近くの椅子に遠慮がちに座った。
私は、雨の守護者戦終了後から山本に言いたかった事があった。


「……貴方は、私の兄様を奪った……貴方に悪気が無い事は分かっているけれど、許せないんです。貴方は……兄様の腕を無くさせた、張本人なんですから。何度貴方を殺そうと思ったか、理解頂けますか……?」

「……分からない」

「もう、何度思ったか分からないんです……貴方への憎しみが、堪え切れないんです。だから……貴方の頬を殴らせて欲しいんです。其れで、少しでも怒りを和らげれば良いと思うから。……もし助けた張本人が私の手で殺されていれば、兄様は悲しむと思うから……」


殴らせて欲しかったんだ。
殺したら、兄様は悲しむだろうから。
殴るだけで許してあげるから、力の限り殴らせて欲しかったんだ。

山本は少しだけ笑って、いつでもどうぞ、と呟いた。
私が山本の頬を力の限り殴ると、山本は宙を舞った。
情けなく宙を舞う山本を見ていると、多少心の中に溜まっていた鬱憤が晴らせた気がした。


「……ごめんなさいなんて、言いませんから」

「分かってるって。あー……にしても、痛い……」


頬を押さえ、痛がる山本。
唇は切れ、出血しているが、兄様はもっと痛かった。
兄様……私我慢するから、早く怪我を治して、早く帰って来てね……?