二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 刹那の欠片 【REBORN!】 4/24up! ( No.144 )
- 日時: 2011/05/04 21:44
- 名前: 葵 (ID: w731Gq1j)
- 参照: 誰か……私を高校生活から脱出させてくれぇえええええぇええぇ
特別番外編
もしも、僕があの家に行かなかったら。
あの家は……至って普通の家族の揃った、一家だっただろう。
僕が壊した、あの家の幸せ。
軽蔑してくれたって構わない。
———————————
僕があの家にやって来たのは、母さんに孤児院から連れられて来たからだった。
……いつも笑顔でいてくれる母さん。
美人で、時には厳しく叱ってくれたりする姉さん。
仕事で忙しいけど、たまに遊んでくれる父さん。
家は豪邸と言ってもおかしくない様な家で、メイドさん達も常時仕えていた。
笑い声が溢れ、楽しげな一家。
幸せな、一家。
以前とは全く違い、誰もが僕に笑い掛けてくれる。
以前の家では僕は空気の様に扱われ、ご飯だってロクに食べさせて貰えなかった。
余りに汚らしい風貌になってしまった僕を見て、親は一言。
___まだいたんだ?
殴る蹴るの適度な暴行を加えられた後に、僕は家を追い出された筈だ。
同じ年くらいの、姉さん。
どうして同じ年くらいな筈なのに、こんなに裕福で……こんなに幸せそうに生きているんだろう?
僕は地獄を見て生きて来たのに……。
幸せに生きて来た奴等なんて、いなくなれば良い。
皆、皆。
不幸になれば良いのに。
そう思い始めた頃、僕はメイド達の井戸端会議から父さんが悪い事に巻き込まれているのでは、という噂を聞いた。
僕は侵入してはいけないと念押しされていた父さんの書斎に入り込み、ある物を見付けた。
それは全て、父さんがこの家を大きくする為にやって来た、悪い事の内容が事細かに書かれた書類。
「……馬鹿みたい」
どうして、家族を守る為だけに悪に手を染めるんだろう?
家族の絆なんて、簡単に壊れてしまう物。
僕には、分からない感情。
それを片手に、僕は父さんを脅した。
こんな事をして許されると思っているのかと、軽く説教もしてみた。
だが、父さんは許してくれ許してくれの一点張りで、遂には僕の目の前で土下座をする始末。
嗚呼、馬鹿な輩。
見付かっていけない様な事、やらなければ良いだけの話じゃないか。
僕は前々からやってみたかった事を、父さんに提案してみた。
「父さんが守りたかったこの家を、崩壊させてみたいんだ」
父さんは僕の頬を殴り、書類を奪い取り、部屋から追い出した。
其処からの僕はある意味凄かった。
幸せなこの一家を壊す為に、裏で手を回した。
父さんの書類に書かれていた、大きなマフィア……『ボンゴレ』の中枢的なパソコンに侵入し、ハッキングした。
大きなマフィアだから侵入には年月がかかったものの、それは僕の計算範囲内だった。
勿論、ハッキングなど直ぐに僕の仕業だとバレてしまうだろう。
それを父さんの仕業にさせ、この家を襲わせる。
そうすれば、僕は自らの手を一切下さずに、この家の幸せを崩壊出来るという寸法だった。
狂ってる。
誰もがそう思うかも知れないが、僕は別に構わないんだ。
だって、僕は知りたい事は絶対に知りたい主義なんだから。
今僕が知りたいのは、幸せな一家が崩壊する瞬間はどうなのか、だ。
だが。
ボンゴレが奇襲して来るまでの間に、この家の歯車は少しずつ狂い出していた。
僕がハッキングしたと知った父さんは、最早逃げられないのだと悟ったのか、僕に暴力を振るい出した。
何故暴力を振るうのか全く分からない母さんと姉さんは、それを防ごうと何度も父さんと口論になっていた。
だが、最終的には父さんの暴力が全て勝っていた。
「……父さん……どうして……どうしてよぉぉおぉ……」
姉さんは毎晩毎晩、僕が寝たフリをしていたら泣いていた。
ある日の夜。
僕は寝付けなくて、起き上がった。
いつも涙の跡を残しながら寝ている姉さんは、いなかった。
何故だろうかと首を傾げていると、メイドの叫び声が聞こえた。
遂に、ボンゴレからの奇襲が来たのだ。
僕は急いで、纏めておいた荷物を持つと、部屋を出た。
既に部屋の外は火の海で、僕は腕で煙を吸うのを出来るだけ防いだ。
姉さんは何処にいるのだろう?
僕の心の中を渦巻いていたのは、その感情だけだった。
階段を下りなければ僕は外へは逃げる事は出来ない為、僕は階段のある方に目を向けた。
目に入ったのは、涙を流す……姉さん。
手元には小さな包丁が握られており、姉さんの足元には母さんが腹を抱えた状況で蹲っていた。
返り血を浴び、悲しげな表情を浮かべる姉さん。
「……や、み……?」
姉さんは僕の存在に気付き、足元に蹲っている母さんを放って、僕の方に歩み寄って来た。
その姉さんを怖いと思い、僕は急いで姉さんに背を向けて走り出そうとした。
が、階段側から逃げられない以上、僕は窓から飛び降りる他外に逃げる方法は無かった。
行き止まりに追い詰められ、逃げ場は窓だけ。
じりじりと近付いて来る姉さん。
僕は意を決して、窓から飛び降りた。
痛いな……。
僕、死ぬのかな……。
打ち所が悪かったのか、僕の体は一切動かなかった。
体が一切動かない僕に近付いて来る、影。
足音が一歩、また一歩と僕に近付いて来る。
それは勿論姉さんの足音であり、姉さんは僕の目の前まで来ると、僕を仰向けにし、僕の上に跨った。
首に手をかけられ、息が出来なくなる。
「……姉さ、ん……ど、う……し……て……」
どうして僕を殺すの。
どうして、どうして。
姉さんは僕がやった事だと知ってるの?
違うよね。
姉さんは、僕がこれを起こした元凶なんだって、責めてるんだよね。
姉さん達の幸せを奪った、僕。
それは確かに、元凶だって言えちゃうんだろうね。
大好きな姉さんに殺されるのなら、僕は幸せ者なのかも知れないな。
皆に不幸を与えておいて、自分だけ幸せ者なんて……虫が良過ぎるって?
そうかもね。
そういえば、僕一つだけ言い忘れてた事があったな。
それだけ言えれば、後悔なんて何も無いんだけどな。
「姉……さ……」
それを言い残す前に、僕の意識は途切れてしまった。
僕、まだ姉さんに好きだって、言えてないのにな。