二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 刹那の欠片 【REBORN!】 5/27up! ( No.151 )
- 日時: 2011/05/29 20:15
- 名前: 葵 (ID: w731Gq1j)
- 参照: あっははははははは〜ぁ……
30話 幸福な夢来る!
「さて、貴女の嫌な記憶……甦らせて差し上げようではないですか」
骸が面白そうに微笑み、明日香が眉間に皺を寄せた。
どうせ嘘なのであろうと、明日香は思っていた。
瞬間。
明日香の目の前が真っ暗になり、明日香は立っていられなくなってしまった。
————嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!
キュリアの精鋭である私が……こんなにあっさりと幻術になど嵌められる訳が……!
意識がまどろむ中、明日香はずっとこの事態が嘘である事を願い続けていた。
チェックメイト
「 王手 です」
その言葉を最後に、明日香は意識を手放した。
———————————(明日香目線)
目が覚め、私は痛む頭を押さえながらゆっくりと立ち上がった。
此処が何処なのか全く分からず……検討すらつかない。
私の中の嫌な記憶……最早多過ぎて分からないというのが本音だった。
「……此処は……」
暗い空間の中、私は一人だった。
この程度なのかと六道 骸を嘲笑うと共に、少々安堵していた。
思い出したくもない程の嫌な記憶……そんなもの、見たくも無かったからだ。
向こうの方で、光がチカチカと光っている。
私はそれに誘われる様に、フラフラとそっちに歩いて行った。
行ったところで、何があるのかは分からない。
けれど……行ってみる他、此処から脱出する方法が無いのだと薄々理解していた。
「……あれ、は……?」
一般的な一家。
それは、私の一家だった。
幸せそうに微笑む、両親。
食卓に並べられている料理は美味しそうだった。
両親は明らかに此方に向かって手を振っているが、私以外誰もいない。
「早くおいで、明日香」
「料理、冷めちゃうよ」
「……私に、言ってるの……?」
そう問うと、両親は貴女以外に誰がいるの? と聞き返して来た。
これは、幻術である筈なのに。
嬉しくて、嬉しくて堪らない。
大人であった筈の私は、気付けば子供の姿になっていた。
子供の姿になっていた私は両親の元に飛び込み、両親の温もりを感じた。
温かく、良い匂いがした。
「どうしたの? 明日香ったら」
「赤ちゃんがえりか?」
「違う!」
からかってくる両親を軽く睨み付けると、両親はケラケラと笑った。
大好きな両親。
これは……幸福な夢。
いつか夢は壊れてしまう。
そう頭では理解している筈なのに、どうしても両親から離れる事は出来ない。
これも全て、六道 骸の思惑通りだとしても。
今だけは……幸福な夢を見ていたい。
「お母さん、お父さん、大好き」
「いきなりなぁに? やっぱり、明日香今日は変よ?」
「早くお母さんの料理を食べなさい。お母さん、今日は張り切って作ってたんだからな」
「はい!」
口いっぱいに頬張ると、懐かしい母の味。
もう食べられるなど思ってもみなかった、母の味。
懐かしくて、懐かしくて、私はその料理を腹いっぱいまで食べた。
食器を片付けてから無性に眠くなってしまった私は、ソファーで寝てしまった。
______母達の命日の前日だと、気付かずに。