二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【学園アリス】幸せを求める愚か者 ( No.15 )
日時: 2010/12/05 16:40
名前: 無幻 (ID: 8hgpVngW)



「貴方達は、次の犠牲者を減らす事に徹してくれればいい。蜜柑ちゃんは、必ず連れ戻すから」


私はそう言って、完全に床に溶け込んだ。真っ暗な闇の中の抜け道は、私と……お父さんだけが知っている。

アリス学園内にある研究所【能力開発研究本部】。私は今、其処に向かっている。私のお母さんは昔、そこで働いていたと言っていた。だが、無茶な研究のし過ぎで使用を禁じられたらしい。禁じられても、入ろうと思えば入れるし、お母さんは其処の鍵を無断で持ち出していた。


「間に合って…………蜜柑ちゃん」


大分進んだ所で一度、地面の上に上がる事にした。其処に広がっていたのは、

【能力開発研究本部】そのものだった。


「其処で何をしているの?!」


後ろから声が向けられ、振り返る。
其処に居た人物は、紫色の髪をしていて、黒色の瞳で、見覚えのある女性だった。その女性は前に出した右手にしっかりと銃を携えている。


「…………雅楽乃??」
「…お母、さん」


お母さんは持っていた銃を下に落とし、私の前まで来て、頬に触れる。


「ああ………“あの人の子供”だわ…。間違いない…雅楽乃ね…」
「……………っ、触らないで!!」


お母さんの手を振り払って後ろに下がる。お母さんは生気のない目で私を見た。背筋が凍った。


「私が…ッ、私がどれだけ我慢して貴女を育ててきたか……ッ」
「…菜乃葉さん、計画についてのお話が………??」


見た事の無い、ショートヘアーの女性が研究所の中から出てきた。お母さんは「邪魔しないでッ」と女性を一喝。女性は少し怯み、中へと戻ろうとした。


「…柚香…」
「…??何でしょう」
「あの子供は、何処にいるの??貴女の娘だろうが何だろうが、関係ないの。さっさと出しなさいッッ!!」


お母さんは柚香さんの肩を持って、問い詰める。柚香さんはお母さんをジッと見つめ、大きな声を張り上げる。私なんてそっちのけのようですね。

———……もしかして、蜜柑ちゃんのお母さん…??

お母さんは柚香さんを殴ろうと拳を振り上げる。私はアリスで地面に潜り、柚香さんが拳に当たらないように柚香さんを攫う。そのまま地面に潜り、元居た場所まで引き下がった。因みに言うと私に触れている人も無機物潜水出来るのですよ、おほほ。


「柚香さんに話があります。だから、少し借りるね、お母さん」
「待ちなさいッッ!!柚香ァ!!雅楽乃ォ!!」


お母さんの悲痛の叫びも虚しく、私達は地面の中を潜っていく。辿りついたのは、私の自室だった。星階級はスペシャルなので広々としている。そして、部屋の明かりを点けた。


「さて、いくつか貴女に聞かなければならない事が沢山あるんだよね。いいかな??」
「…ええ」


私は指を一つずつ立てていく。


「一つ、蜜柑ちゃんの居場所は何処か。二つ、何故お母さんの研究に加担しているのか。それと…私の過去を知っているか。私が聞きたいのはこの三つ」


私はふぅと深い溜息をついて再び柚香さんを見る。うん、美人だ。


「蜜柑は……」「雅楽乃ォォ?!」


…やば。部屋の明かり点けなきゃ良かった。


「ちょっと柚香さん、話は後で。取り敢えずはクローゼットの中に隠れて!!」
「え…、ええ……」


私は無理矢理柚香さんをクローゼットに押し込むと、普通に扉を開けた。外に居たのは朱兄と鳴海先生と翼先輩と蛍ちゃんと流架君と棗君だった。結構沢山。


「……どしたの」
「どしたのじゃねぇだろが。蜜柑ちゃんは??」
「…お母さんに邪魔されてそれ所じゃなかった」


私は朱兄をしっかりと見つめ、「私は一生懸命やったのよ」アピールをする。


「それとね……」


私は言葉を詰まらせて俯く。バッと顔を上げて言う。


「安積柚香さん………蜜柑ちゃんのお母さんも発見した」


部屋には沈黙が流れる。私はクローゼットの前まで行き、アリスを使う。無機物潜水で中に入り、柚香さんに小声で言う。


「…………行きますよ」
「えっ…」
「おいッ!!雅楽乃?!」


朱兄がクローゼットを開けた時には手遅れで、私達は既に地面に溶け込んでいた。
私達が去った後のクローゼットの奥には、文字が彫ってあった。


『朱兄へ

  【能力開発研究所】には蜜柑ちゃんはいない

                       雅楽乃』