二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【学園アリス】幸せを求める愚か者 ( No.6 )
日時: 2010/12/04 21:58
名前: 無幻 (ID: 8hgpVngW)


「鳴海先生?」


追いついた私は荒くなっている息を整えて、鳴海先生を振り向かせる。鳴海先生は私を見て「何?」と笑顔で微笑んだ。
私が手紙を見ていなかったら、もっと笑顔を返せたかもしれないのに、見てしまったから、笑顔にはなれない。顔の筋肉が衰えてるとか、そんなのじゃないよ、ていうかそれ、失礼だよ。


「先生、これは、何なんですか……??」
「!!   それ……ッ」


鳴海先生は自分のポケットを探る。否、此処にあるんだから無いに決まってるのにこれをするのは人間としての性だろうか。
震える足が鬱陶しくて、私は唇を噛んだ。


「どーゆー事、ですか」
「……どうもこうも、そういう事だよ…」


その手紙に書かれていたのは、ここ最近起きていた女児殺傷事件の犯人についての事だった。
私は後ろに気配を感じ、振り向く。


「…棗君…流架君………」
「ごめん、深谷。聞いちゃった」
「…」


流架君は申し訳無さそうな表情で俯いて、棗君は無言で此方を見据えている。
私は鳴海先生の方向に向き直り、話を再開する。流架君は私が其処に居る事を否定しない態度を見て理解したのか、其処に留まった。


「何で、真っ先に私の所に言いに来ないんですか」


冷たい視線を向けて、今にも出てきそうな涙を直前で止まらせる。鳴海先生は無言を貫き通し、一向に口を割ろうとしない。


「はっきりと、断言させて貰います」


私は偶然ポケットに入っていたボールペンを取り出し、おもむろに紙に文字を書き連ねる。

私は、紙に書いた【深谷 菜乃葉】の文字を鳴海先生に見せながら言う。


「この事件の犯人は、私の母親で、私を探している」
「………………そう、だよ」
「なら、何で……っ」


私は堪えていた涙を表に出し、鳴海先生を真摯な瞳で見つめる。鳴海先生は目を逸らし、私を直視せずに外を見ている。


「それを言うと、君は彼女の元へと行くだろう?」
「当たり前でしょう??だって、私が行けば解決するんですよ??」


さも当たり前のように言葉を言う。鳴海先生は覚悟を決めたような瞳で私の方に向き直り、意を決して言った。


「彼女は蜜柑ちゃんのお母さんとも一緒に行動しているんだ」
「!!」


私はバッと棗君の方を向いて棗君達の存在を確かめる。流架君は心配そうに此方を見つめ、棗君は静かに外を見つめている。
その棗君の瞳は、何処か寂しくて、切なくて、大切な誰かを思い浮かべているような優しい瞳だった。


「蜜柑ちゃんは、この事知らないんだよね」
「うん、そ」「鳴海せんせ———ッ!!」


鳴海先生の言葉を遮り、委員長と今井蛍ちゃんが駆けて来ている。酷く焦っている様子で、ただ事では無さそうだった。


「鳴海先生………………っ」
「どうしたの、二人とも」


蛍ちゃんは私を一瞥して鳴海先生に言う。


「蜜柑が……っ、蜜柑が連れ去られたわ…っ」