二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: もう一つの獣の奏者 ( No.11 )
日時: 2010/12/11 18:43
名前: (梓!*。 ◆hLMPZ4CBa. (ID: aU3st90g)

*第3話*


小鳥の囀りが寝ぼけた耳に滑り込んできた。
それを合図にかエリンはガバッと起き上がった。

「——……良かった、いた……——おはよう」
「おはよう。——……どうした?」

イアルは首を傾げながら軽く返した。
エリンは安堵のため息をホッ、とつくと答えた。

「貴方が、逃げ出してるんじゃないかって。
でも大丈夫だった——……体は、どう?」

イアルは足の辺りを見た。
擦り傷はあるが、心の痛みは消えていた。

「大丈夫……——心配かけて御免。」

母の足音が聞こえてきて、エリンは戸を開けた。

「イアル君、気分はどう? エリン、ずぅっと心配していたのよ」
「お母さん! それ秘密だったのに……——イアル、君?……——ごめんね、気にしないで」

エリンの赤くなった顔を見ると、本当に山リンゴに見えてきたイアルの腹が鳴った。

「お腹すいたのね。ちょっと待ってて」

母が土間の方へ消えると、エリンは微笑んだ。

「イアル君、私のことエリンって呼んでいいからね。
まだ一度も呼ばれて無いもん!」
「分かった……——ここは、良い所だな」

日差しで火照った顔を拭って、イアルは言った。

「そうでしょう? 冬になるとね、ここら辺が全部雪で真っ白になって綺麗なの。」
「——……あ、そうじゃなくて……——人の、心が。
俺の生まれたところは、穢れてたから。」

エリンは吃驚した顔をしたが、何も聞かずにイアルの手を引いて机まで連れて行った。


「——いただきます!」

暖かい光に、藁がキラキラと輝いて見えた。
イアルの瞳も、輝いた。