二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: もう一つの獣の奏者 ( No.13 )
日時: 2010/12/14 16:33
名前: (梓!*。 ◆hLMPZ4CBa. (ID: aU3st90g)

*第4話*


「米? これは味噌汁?」

何にでも興味を持ち聞いてくるイアルに、母はゆっくりと時間をかけて答えた。

「大公領ではお米を主食にしているのよ。
味噌汁はね、ゆっくり煮込んだ出汁を何度もこして作ってあるの。——……おいしいかい?」
「はい。ファコは、無いんですね。」

エリンは「ファ、コ?」と口を挟んだ。
過去に触れたくは無かったが、好奇心旺盛なこの時期、聞き逃すと後悔しそうだった。

「麦みたいなものを、醗酵させたもの……——」

柔らかい瞳でイアルが答えると、エリンは薄く笑った。

「へえぇ! お母さん、今度作ってくれる?」
「勿論よ。イアル君がいてくれれば作ってあげる。」

エリンは黙々とご飯を食べ、手を合わせてイアルが食べ終わるのを待った。

「あぁ、そうだ……——エリン、イアル君の荷物の片付けを手伝ってあげなさい。それから毛布も一枚干したてがエリンの布団の上にあるから、それも敷いてね」

言い終わるや、闘陀衆伝統の服を着ると飛び出していった。

「——……ご馳走様でした」
「味、大丈夫だった?」

土間の戸を開けながらエリンがいうと、イアルは目を細めてうなづいた。
それを見てエリンはほっとして、部屋へ入るようにうながした。
でも煙臭いことに気づいて息を深く吸った。

「あ、いけない!」

土間の火がちろちろと燃えているのを見て、エリンはぱっと駆け出した。
息を吹きかけ、火が消えたのを確かめると胸を撫で下ろしながら戻った。

「ご免ね。入って! あ、これ毛布。まだ肌寒い程度だからこれくらいでいいと思うよ!」
「寒いのは慣れてるから」

言いながら荷物を動かしたせいか、イアルの服の裏から何かが滑り落ちた。
コーン、と金属音が部屋に響いて、エリンは顔をしかめながら拾った。

「——……これ、音無し笛——……!!」

その瞬間からエリンの瞳から光が消えた。
イアルは吃驚して顔を覗き込んだが、別に異常は無かった。
本能的に目の焦点がずれたようだったが、イアルは心配して聞いてみた。

「大丈夫、大丈夫だから——……!」

元の瞳でそういうエリンに不信感を覚えながら、イアルは片付けを続けた——……。