二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: もう一つの獣の奏者 ( No.17 )
- 日時: 2010/12/18 18:54
- 名前: (梓!*。 ◆hLMPZ4CBa. (ID: aU3st90g)
*第8話*
「ただいま、お婆ちゃん」
「ただいまぁ。お婆ちゃん、ご飯頂戴!」
優しい声に続いて、鋭く冷たい声が聞こえた。
その2人が居間へ入ってくると、明らかに後から来た女が睨んできた。
「——……アリエスとリナエス。私の孫さ。
2人とも悪いけど、この子達に勉強を教えてくれるかい?」
エリンは胸の前で手を交差させ、体を2つに折った。
正式なお辞儀の仕方を何故知っているのか、イアルは不思議に思ったが自分も同じ動作をした。
「エリンと申します。宜しくお願いします!」
「イアル、です。一日お世話になります」
アリエスの瞳は、エリンの緑の髪色に釘付けだったが
直ぐに失礼だと気づき、笑いかけた。
「分かったわ、お婆ちゃん。エリンとイアル、ね?
私は植物とか、生物に詳しい…と思うから何でも聞いて!」
エリンの目が輝いた。
ずっと知りたかったことを聞ける—そう言いたげな、綺麗な目だ。
「えぇ、アリエス…本当に教えるの?面倒くさい。
でも、お婆ちゃんが言うんだから——……数学なら教えてあげるわ」
「リナエス、辞めなさい。可愛そうよ」
アリエスがたしなめるが、エリンとイアルを見てリナエスが続けた。
「この子は<緑ノ目ノ民>なのでしょう。気味悪い!
あれは変な神を信頼してる<霧の民>のようで、教える気にはならないね」
「リナエス!!」
ご飯の入った御椀を持ってエリンを冷たい目で見るリナエスの声が、氷の刃のように突き刺さった。
エリンは少し体を動かして、髪が目立たない位置へ向いた。
「宜しくお願いします」
無理に強く張った声でエリンが言うと、アリエスが外へ出るよう促した。
2人が靴を履き外へ出ると、やけに鳥の声が大きく聞こえた。
「この鳥の声はね、雄が雌を呼ぶ声なのよ」
エリンは好奇心疼く心を抑えて、最も気になったことを聞いた。
「それは、子を孕んでいるからですか」
「——貴方は物知りね。でも、違うのよ!
イアル君はどう推測する?」
イアルは2羽の鳥を見比べて答えた。
「——……親子、というか兄妹に見えます」
「正解! やっぱりイアル君の方が年上だからね。
——あれは危険を知らせるために、家族を守るために鳴らす声よ」
アリエスの笑顔が、太陽に反射して眩しく見えた。