二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: もう一つの獣の奏者 ( No.24 )
- 日時: 2010/12/25 20:20
- 名前: (梓!*、 ◆hLMPZ4CBa. (ID: aU3st90g)
*第11話*
「あ、の……課題は……?」
エリンが恐る恐る聞くと、リナエスは笑った。
口元はキュッと上がっているが、目は冷たい笑みだ。
「全問、正解! おめでとさん」
「あら、珍しいわね。リナエスの課題をこなす子がいるなんて」
アリエスは鈎針を動かしながらこちらを見た。
「あんた達、気に入ったわ。……少なくともあの爺よりは!」
「お爺さん……あ、ガシュラ小父さん。今日はいないんじゃ?」
エリンが答案用紙を渡してもらいながら聞いた。
「お婆ちゃん、また呆けたのかしら。もうすぐ帰るわよ……はぁ」
ため息をつき、立ち上がるリナエス。
イアルは午後には帰れると聞いていたのでなんとも思わなかったが、エリンの反応は違った。
「あの、ここにいるイアル君……彼の事をなんと思うかしら」
「え? あぁ、君ね。——あの爺のことだから追い出すんじゃない」
他人事だと、そういう言葉が省略されていた。
イアルは午後のソヨンが帰ってくる時間まで隠れたかった。
<堅き盾>の頃は生き残れば何をしても良かった。
死にたければ死に、生きたければ戦う——それが生活だった。
「——ただいま。」
しわがれ声がして引き戸が開いた。
「ちっ、帰って来やがった——……お帰り、お爺ちゃん!」
「お帰りなさい!」
舌打ちをしたリナエスを隠すようにしてアリエスが飛び出す。
2人は急いで正座をして、ガシュラを待った。
「——誰じゃ?」
「あの、エリンです。母の不在で此処に置いてもらっています。
午後には去るし、ご迷惑をおかけしないので、どうか——!」
エリンが目を伏せた。
「小娘が……お前が此処にいること自体が迷惑じゃ!隣の薄汚い小僧は?」
「……イアルと申します。」
低く落ち着いた声が逆に癪に障ったのか、ガシュラはごみを払うかのように手を振った。
「出て行け、出て行け。もう午後ではないか! 約束が違う」
「お爺さん、あんまりだよ。可愛そうじゃないか」
エシュラが小声で言ったが、ガシュラは皮肉口で言った。
「何故<霧の民>をここに入れた。菌でもあったらどうするのじゃ!」
エリンの瞳が潤んだ。
イアルが言いかけようとしたとき戸が開け放たれる音がした。
「困ります。大事な娘を塵のように扱われては!
エシュラさん、——あら、アリエスさんとリナエスさんも。お世話になりました!」
ソヨンの厳しい声とともに、2人は手を引かれて出ていった——……。