二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: もう一つの獣の奏者 ( No.25 )
- 日時: 2010/12/27 23:24
- 名前: スズ ◆ixbyCx13Wk (ID: OWe0NuL4)
- 参照: +第12話+
エリンの緑の瞳はまだ潤んでいた…。
イアル自身は、自分の出来る事が何か模索しながらそっとエリンに近づいてみる。
「エリン!ガシュラさんが居る時に預けてしまってごめんなさいね…。
お母さんがもっとちゃんと聞いていれば…。あ!言われた事は気にしてはダメよ。どんな事があっても貴方は私のカワイイ娘なんだから…」
ソヨンは反省と悲しみの入り交ざった表情を浮かべ、エリンを説得する。
エリンは、母の発する言葉に一語一句かみ締めるようにして頷いていた…。
そこにイアルの入る余地を与えないかのように親子は目と目、心と心で会話をしている。
人間の冷たさに敏感なのはエリンもイアルも同じだったけれど、イアルに欠けていたのはエリンにとってのソヨンのような存在がいなかったことだと、イアルは眼の前の光景を目の当たりにして強く思った。
「大丈夫だよ!お母さん!あ、お母さん聞いて!私ね!アリエスさんとリナエスさんに色々教わったの!」
エリンは、さっきまでの悲しみに蓋をして、めいっぱい明るく振舞ってみせる。
ソヨンにはそれが寂しくてならなかった。自分のせいで自分の愛娘が辛い思いをしていると考えると、胸が強く締め付けられる感覚だった…。『何故、この子は悲しき運命をたどるのだろうか…。』毎日を生きる中でソヨンの心に浮かぶこの言葉が今日はより一層に浮かんでくる。
2人の様子を見ていたイアルは不安になっていた。この村に来て頭から離れなかった自分の悩みが、辛くのしかかってくる。
「俺は、ココに居て本当に良いんですか?俺は、ココで何をしてるんですか?自分のしたいことも禄に出来てない…俺は本当にココに居て良いんですか!!!?」
もう、誤魔化す事が出来ない時に大きな声で心の声が漏れてしまった事に気付いた。
イアルの叫びを聞き、親子は胸の奥が痛んだ…。
イアルはやり場が無くなり勢いだけで家を出た…。
これが、小さき少年のもどかしさが起こした悲しき家出…