二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: もう一つの獣の奏者 ( No.27 )
日時: 2010/12/28 23:32
名前: スズ ◆ixbyCx13Wk (ID: OWe0NuL4)
参照: +第14話+

ソヨンは願わずには居られなかった…。
娘の無事をこれほどまで願った事がこれまで一体あっただろうか?
娘と約束したとおり猪肉はもう作り終わった。後は、エリンの帰りを待つだけ…。
あまりにも不安になって、キュッと自分の手を握り締める…。

「ただいまーーー!」
そんなソヨンの不安を一気に取り除いてくれるかのように、エリンは明るい大きな声で家に入ってきた。
服には少し泥がついて、顔にも汚れがついているけれど、怪我も何も無く帰ってきた。
後ろにはイアルも申し訳なさそうに立っていた。

「エリン…少しだけお母さんとイアル君だけにしてくれないかな?大切な話しがあるの…」
「え…お母さん!イアル君は私を助けようとしてくれたよ?だから、出て行けなんて言わないで…」
「安心して、そんな事は言わないから。あなたはお風呂に入ってきなさい…もう準備はしてあるから」
「うん…分かった」
エリンは心配そうに母とイアルのツーショットを見ながらノロノロと風呂場に向かった。

「俺の事、殴りたければ殴ってもらっていいですよ?
だって、自分の娘を危険な目に遭わせたんですし、当たり前ですよ…」
イアルの目には後悔の涙が溜まっているように見えた。
そんなイアルをソヨンはゆっくり抱きしめる。

「バカね…言ったでしょ?此処に居る間はわたしは貴方の保護者だって…」
ソヨンの目から安堵の涙がこぼれていた…。
イアルも涙を一滴だけ流した。自分のした事の無意味さと、自分の未熟さにただただ『後悔』という感情だけが心を一色に染め上げる。
はっきり言って、ソヨンの涙の真意はイアルには、はっきりと理解出来ていなかった。けれど、いつか迎えるその瞬間、自分はこの人に感謝する事は今でもはっきりと分かった…。

「俺は、此処にいて良いんですね?俺は、此処で新しい自分を見つけます。俺は、此処で…エリンを守りたいです…」
イアルはソヨンの胸の中ではっきりと宣言した。
ソヨンが小さく頷いたのを頭上で感じる。

小さき少年のもどかしさが起こした悲しき家出はこうして幕を閉じた。