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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: もう一つの獣の奏者 ( No.28 )
- 日時: 2010/12/29 15:51
- 名前: (梓!*、 ◆hLMPZ4CBa. (ID: aU3st90g)
*第15話*
「いただきます」
エリンはちょっとイアルを見上げると、食べ始めた。
ラコスの葉をひょいと退けてかぶりつくとじゅうっと音がして旨味が口いっぱいに広がった。
「おいしい! お母さん、おいしいね」
「そうね、エリン。——……食べ終わったら、磨き玉を作るの手伝ってくれる?」
ソヨンはいつもの優しい笑みで、そう尋ねた。
「うん! でも、闘陀見せてね?」
「あら、駆け引き上手になったじゃない。いいわ、見せてあげる!」
ソヨンが笑うと、首にかけた音無し笛も揺れた。
エリンは微笑むと、またご飯と一緒に猪肉を口に入れた。
「イアル君も、行く?」
ソヨンが少しためらいがちに聞いた。
イアルは首を横に振り答えた。
「いいえ。俺、知り合いに文を書くんで、良いです。
無事だということを伝えたくて——切手、貰えますか?」
「ええ、いいわよ。その知人も安堵するでしょうね!」
ソヨンはくすっと笑うと、立ち上がった。
「じゃあエリン、土間で準備をしているから来てね!
イアル君、切手はそこの文箱の裏の引き出しから取って」
ソヨンはそう言い残すと、土間へ姿を消した。
「あの、お母さんとどんな話をしたの……?」
味噌汁をごくごく飲みながらエリンが問うた。
「えっと……心配かけるな、って」
「嘘! それなら私いても良かったじゃない。」
エリンはぶすっとした口を開いてそう言った。
「——……御免な、今は言えない。日を追って、また話したい」
「……そういうと思ったぁ。分かった、としかいえないね!じゃあ、ご馳走様でしたっ」
疼く好奇心をおさえているのが、早口なことから分かった。
イアルは気づかないうちに、そっと微笑んでいた——……。
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