二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: もう一つの獣の奏者 ( No.31 )
- 日時: 2011/01/02 02:16
- 名前: スズ ◆ixbyCx13Wk (ID: OWe0NuL4)
- 参照: +第18話+
エリンはアリエスに言われたとおり、リナエスに銃を渡し真っ直ぐ家へと向かっていた。
ソヨンの元へ銃が届いたのはエリンが銃を渡した3分後…。
ソヨンは大急ぎで銃をハッソン達が居る門の前まで走って持っていく。
「待ってください!!!」
ソヨンは大きな声で叫びながらハッソン達の前に立ちはだかった。
「どけ!ソヨン!!この少年は無抵抗でここまで来た!これはコイツが犯人である最もな証拠だ!何故お前は抵抗する?」
「いいえ違います!!此処に!私が手にしているこの銃こそ最もな証拠です!!!」
ソヨンは何を言われても怯むものかと、周りのハッソンを含む村の者達を強く睨んだ。
「……では聞いてみよう、その銃がどういう証拠なのかをソヨン」
ハッソンは睨んできたソヨンの瞳を静かに見つめてから問いただした。
「はい、この銃はエシュラさんのご自宅にあった銃です。
此処に付着している血も古くは無いもの、つまり最近付着したものです。そして、エシュラさんの2人のお孫さん…アリエスさんとリナエスさんの証言によると、この銃は今朝…リビングに急に飾ってあったと言っていました…」
「なるほど…この条件からして、お前は今回の犯人をエシュラだと思っているのだな?」
「……そういう事になります」
2人の会話は何一つ争いの要素を感じさせない静かな会話だった。
この会話の真っ只中に居るイアルは、静かに自分に降りかかっている今の状況を分析していた。
「なるほど…ではソヨン、何故この少年……イアルは無抵抗で我等に従い付いて来た?」
「それは…」
ソヨンは考えるようにしてイアルのほうをじっと静かに見つめた。
イアルは自分のした行動に対してソヨンが何故、悲しみの表情で見つめてくるのか少し疑問に感じていた…。
「この少年、イアル君は心に大きな傷を抱えています。
そのせいで人間の感情というものを忘れてしまっている部分があります。
私としては、人間の感情というものは大事であると彼に教えなければならないと思っています。
しかし、今の彼はまだ感情を分かりきっていません。今の彼の行動の源は、全て利益の上になっています。
彼の今の状況把握は実に正しいものだったと思います。
私たち家族にとっての不利の状況を彼は失くそうとしてくれました。ですがそれは、機械的な行動で人間的とは言えません。
まだ人間的である我々に、理解しがたい行動をしたのはそのためです。普通ならば、無理矢理にでも逃げ延びようとするその状況で、無抵抗だったのはそういう事です。ご理解頂けましたか?」
ソヨンの言葉に村人達は考え込んでいた、『少年がそのような状況ならば、見逃してやるべきか』という正論と『ソヨンに丸め込まれてる』という反発心のなかで如何すべきかを…。
考え込んでいる村人の思考をやめさせるかのように、一人の大きな老人が叫んでやってきた。
「馬鹿言うな!!!!!!!!そいつに決まってる!」
それはエシュラの夫ガシュラであった…。