二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: もう一つの獣の奏者 ( No.32 )
日時: 2011/01/03 09:17
名前: (梓!*、 ◆hLMPZ4CBa. (ID: aU3st90g)

*第19話*


「…ではお聞きします、ガシュラさん。貴方はご自分の孫を信じていますか?」
「勿論だ。それが何だ!!」

ソヨンはさっ、と後ろに退いた。

「アリエス…御前、此処で何をしている! 子供が来る場では無い!!」
「あら、お爺様。子供だけれど、立派な証人よ。証人に年齢制限は、無い」

アリエスは一度口を閉じ、ハッソンを見て口を開いた。

「あれは、事件が起こる昨日の夜でした。私が厠へ行こうと目を覚ましたとき、お婆ちゃんの声が外からしたのです。」
「そなたの伯母は、なんと?」

アリエスは鋭い瞳でガシュラを睨むと言った。

「…これはいい皮ができそうよ。苦労して狩った甲斐があったわ……」
「如何でしょう、お爺様」

ソヨンはハッソンに向き直ると問うた。

「うむ……信じ難いが、……誰か、この銃の血痕を調べて参れ!」
「待ってください、村長!! この孫は嘘をついています、自分の手柄が欲しい為に、嘘をついている!!」

ガシュラは荒れ狂った声で言った。

「あら、見苦しいですわよ。……貴方はついさっき、孫を信じていると仰ったではないですか」

ガシュラは言葉を見つけようとするが、何も言い返さなかった。

「ハッソン村長、結果を申し上げます。血痕はあの獣達のものと判明致しました! そして指紋は——……エシュラのものと見られます!!」
「決まりだな、ガシュラ。……見苦しい真似は辞めろ」

イアルの錠が離され、その錠でガシュラを捕まえた。

「何だ! やったのはあの婆さんだ、俺は関係無いんだよ!!」
「罪人を庇った罪として、嘘の情報を提供した罪として……連行する。意見は?」

ガシュラは唇を噛みしめると、大人しく手を前へ出した。

「あぁ、イアルとか言う者。」

ハッソンがイアルの手をとった。
反射的に身構えるイアルの頭に手をのせ、ハッソンは言った。

「……君は、偉い。事態を大きくしないように頑張ったのだな。
でも、……違う時は違う、と否定せよ。——さぁ、坊主は帰れ」

ソヨンに手を引かれ、その場を立ち去るイアル。

「……エリンが喜ぶわね」
「え?」

ソヨンの言葉を聞き返すと、天使のような微笑を浮かべたソヨンがいた。

「これ全部、エリンがやったようなものよ。銃を奪ったのも、全部……」


イアルは早く家に帰りたくてしょうがなかった。
それは、初めての思いで、なんとなく心がくすぐったかった。