二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〔銀魂〕___雫ヲ流ス ( No.167 )
日時: 2011/06/05 14:37
名前: 瑠々 (ID: .qxzdl5h)

【瑠璃誕生日特別編】

——綺羅綺羅光る


 攘夷戦争の戦場で、何度も殺されそうになった。
名前も無く、‘鬼’って呼ばれて何人もの人を殺して生きてきた。
みんなが‘鬼’って言うから、自分の名前も自分自身も、鬼だとずっと
思っていた。
でも、心の何処かでずっと願ってた。

———自分だけの名前が欲しい、って。


「——り、瑠璃」

優しくて、でも何処か力強い声がして、重い瞼を開けた。
少女の血の様に赤い瞳に映るのは、優しい笑みを浮かべた男。

「瑠璃、よく眠っていましたね」

瑠璃、と呼ばれた少女は、少しきょとんとした表情をした。

「…る…り…」

風にかき消されそうな程、小さな声で呟いた。

今だ慣れない、自分の名前。

一年前、この男に貰った『水無月瑠璃』と言う名前。
この男に出会う前までは‘鬼’と呼ばれ生きてきた。だから、
まだ少し慣れない。

「どうかしましたか?」

男は瑠璃を見て、にっこりと優しく微笑んだ。
一年前、戦場に現れ、松陽と名乗ったこの男。初めはこの男の笑顔は
偽りだと思っていた。でも、松陽と共に過ごして行くうちに、そんな事考えなくなった。

「瑠璃、一緒に散歩に行きませんか?」

松陽の問いに瑠璃は小さく頷いた。

−−−−−−−−−−

二人は空が橙色に染まりだす頃、土手を歩いた。
二人の横を走る兄妹の髪の色も橙に染まっていた。
すると松陽は何か思い出したようにして聞いた。

「瑠璃、傘は?」

松陽の言う通りだった。
瑠璃は『黒兎族』と言う族生で、日の光に少し弱い。特にこの時間帯は
日が眩しくなる。なのに今日瑠璃は、傘を持って来てない。

「…夕焼け、見たいから…」

小さく呟くと橙色の太陽に手をかざした。
橙色の空にはカラスが飛び交い、東の空は少し暗くなっている。

「あたし、今はこの景色、好き…」

そう言い、にっこりと微笑んだ瑠璃に、松陽も笑みで返した。

「瑠璃、手を出してください」

瑠璃は少し不思議そうな顔をしながら手を出した。
瑠璃の小さな手に、松陽の拳が重なる。松陽の手が離れるのと同時に
瑠璃の手の平に、ファーの付いた瑠璃色の石に紐が通してある飾り。

「誕生日おめでとうございます。瑠璃」

松陽に言われて初めて気付いた。今日は一年前、松陽に出逢った日。
そして、自分の名前と誕生日を貰った日。

日の光があたり、綺羅綺羅と輝く瑠璃色の石。

「…綺麗」

瑠璃はそう呟くと刀の鍔に人を通し、笑顔で、でも少し恥ずかしがりながら言った。

「…せんせ、ありがとう」






綺羅綺羅光る。
(きみの瑠璃色の笑顔)