二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 〔銀魂〕___雫ヲ流ス ( No.180 )
- 日時: 2011/07/31 15:39
- 名前: 瑠々 (ID: r9bFnsPr)
第二十三話 奪う自分と救う貴方
血の臭いが漂う戦場。
この場所で何人もの敵を斬っただろうか。
雨が降る戦場で、歩きながら屍を避け、瑠璃は思った。
屍の大半は人間だが、やはり天人も混ざっている。
血を流し、死んでいる天人を見る度、瑠璃は思う。
(この天人は、あたしが殺したんだ)
瑠璃は、自分が斬った天人の顔を覚えていた。
自分が振った刀を、ただ見つめる天人。
鮮血と共に上がる断末魔。
未来ある者の命を、己が全て、切り捨てた。
そう思うと、いつも脳裏を過ぎるのは松陽だった。
松陽は、今の自分の姿を見たら如何思うだろうか。
戦に参加したばかりの時は、よく考えていたが、決心が鈍るので今は余り考えないようにしている。
(——帰ろう…)
瑠璃は、もと来た屍だらけの道を歩き出した。
*
戦場から余り遠くない小さな山に、瑠璃の使っている民家がある。
もう何年も人が住んでいないらしく、家の中は所々ヒビが入っているが、無いよりはマシだ。
瑠璃が戸に手を掛けたとき、近くのしげみからドサリとなにかが倒れる音がした。
不審に思い、ゆっくりと音の方へ近付いた。
「あ…っ」
其処には、歳は自分と余り変わらない少女が倒れていた。
少女は武装していて、血だらけだったが息はある。
ここは普通、手当てをするのだが、瑠璃はそれをためらった。
松陽亡き後、瑠璃を引き取ってくれた者が居た。
その者は、瑠璃を我が子同然のように可愛がってくれ、松陽が居なくなって辛かったが、幸せだった。
だが、それは一瞬の出来事だった。
その者は、一ヶ月と経たぬ内に死んだのだ。
辻斬りにあって。
それから瑠璃は、人と関わらなかった。
いや、関わりたくなかったのだ。
また何かを失うのが怖くて。
(でも、手当てくらいはしないと…)
*
次の日の朝、この日も戦があったが心配性な瑠璃は戦には行かず、
少女の看病をしていた。
だが少女は、一度も目を覚ましていない。
(それにしても、立派な刀だな…)
瑠璃が少女の刀を見ていたとき、少女がゆっくりと目を開いた。
右目に包帯を巻いているので、左目をキョロキョロと急がしそうに動かしている。
そのとき丁度、瑠璃と少女の目があった。
その瞬間、少女はガバリと起き上がった(まだ傷が痛むみたいで、辛そうにしていたが)。
すると、瑠璃の戦用の着物と刀を見て聞いてきた。
「貴方も戦に参加してるの?」
少女の問いに瑠璃はコクリと頷いた。それを見た少女は安心した表情になったが、ほんの一瞬だった。
部屋の隅に置いてあった瑠璃の番傘を見た瞬間、少女は目を見開き、
自分の傍にあった自分の刀を取ると、キッと瑠璃を睨んだ。
「———アンタ、天人?」
どくん。
瑠璃の心臓が脈打った。