二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 〔銀魂〕___雫ヲ流ス ( No.52 )
日時: 2010/12/27 11:21
名前: 瑠々 (ID: 5YaOdPeQ)



第六話 少女の前に現れたのは、

あれからどれだけ経ったのだろう。
降り注ぐ雨は次第に激しくなり始めた。
それでも少女はただ其処にぼうっとして屍の上に座っていた。

「・・・お腹、空いた・・・」

先程まで食べていた握り飯も、血が付いて食べられなくなってしまった。其れにこの雨だと、食料があったとしても食べられないだろう。

すると、少女の頭は急にズッシリと重くなった。
慌てて後ろを見る。其処には、クリーム色の長い髪に腰に刀を差している男の人が居た。


「・・・戦場に屍を喰らう鬼がいると聞いてみれば、可愛い鬼が居たものですね」

『可愛い』。少女は其の人が言っている意味が分からなかった。
”鬼”と呼ばれ、恐れられた自分の何処が可愛いのだろうか、と思った。でも、何時もなら手を叩いて逃げるのにこの人だけは、何故か、
逃げたりしようと思わなかった。

ふと男の人は少女の手に持つ、血の付いた刀と傘を見た。

「・・其の傘と刀で、己の身を守ったと言う訳ですか」

男の人はクスリと笑うと、少女と目が合う様にしゃがみ込んだ。

「・・人に怯え、己を守る為に振るう剣なんてもう、捨てちゃいなさい。
これからはその刀を、人を守るために、己の魂を守る為に振るいなさい」

「この人は何を言っているんだ」と言う目で少女は男の人を見た。
男の人は少女の手にそっと手を伸せるとこう言った。

「私の言っている事が分からないでしょう。其の意味を知りたいですか?」

其の人の言葉に少女はコクリと頷く。

「そうですか。ならばこの言葉の意味を知りたいのなら着いて来なさい」

男の人はそう言うと、立ち上がり、少女に背を向けた。

何時もなら無視しているのに、少女は立ち上がると走って男の人の隣に言った。
男の人は少女を見て優しく笑った。

その笑顔は、この雨空を打ち消すかの様に優しく、暖かかった。

冷たくなった少女の心も体も、一気に温かくなった。