二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: [[遊戯王]] 決闘者の道を歩む者 ( No.63 )
日時: 2011/01/05 22:05
名前: 青金石@翼神竜 ◆Mw9em79sDc (ID: ZMeIuJbG)

第六話『現れる闇の住人』(アニメの13話に似てる感じの話(初めてのバクラvs闇遊戯のアレ))


「にしても……」
 
 城之内が話の間に、世南のデッキをひょいと手に取った。あ、と小さな声を出す。

「すげーなお前んトコのカード。見たことない物ばかりだぜ」

 一枚一枚大切に扱いながら、カードを見ては感想を口にする。驚いたりと色んな表情をしていた。
杏子と本田、双六も興味津々のようでカードを覗き見た。


「あ、さっきコイツで海馬のブルーアイズと戦ったんだよな?」

「わしも見るのは初めてじゃ。訊いたことはあるがのう」

 眺め見ていたのは、鋼鉄の翼龍のカード。世界にたった一枚しかないと言う幻のレアカードだ。


「そのカードは、父が私に初めてくれたカードです。気付けば何度もこのカードに助けられた気がします。」

 それは世南にとっては絶対に無くしてはならないカードだった。
父の魂がこもっているのかもしれないと思い、傍で見守ってくれるようにと必ずデッキに入れている。

「僕もこの、ブラックマジシャンは絶対入れているよ。」

「俺も遊戯から貰った、時の魔術師は必ず入れるぜ! ピンチの時の切り札だからな」

 遊戯と城之内は自分のカードデッキから一枚抜き取り、それぞれお気に入りのカードを世南に見せる。
遊戯のブラックマジシャン、攻撃力2500と魔法使い族では優秀な一枚だ。
城之内の時の魔術師は時計の妖精みたいなものがマジシャンの様な格好をしている。レベルも攻守も低いが、効果はギャンブルの様に、
当たりが出れば相手モンスターを破壊、はずれの場合は自滅という運試しの効果を持っている。
 釣られて、本田と杏子もお気に入りのカードを紹介した。

「へぇ……素敵なカードですね……やっぱり、ペガサス様は凄いですね」

 ペガサス・J・クロフォードはデュエルモンスターズの生みの親である。
彼の力で沢山のカードが生まれてきている。世南も尊敬に値する人物だ。

「世南ちゃんも、ペガサスの事を?」

「勿論ですよ、父と良く慕っていましたから。」

 遊戯と和気藹々と話していると、そこへ城之内が割り込んで入ってくる。そしてまた唐突な発言をした。


「世南、遊戯とデュエルしてみたらどーだ?」

「ふぇ?」

 思わず変な声を出してしまった世南。遊戯は僕? と疑問符を浮かべて自分に指を向けていた。
城之内は頷くと理由を述べ始める。

「また俺達のお気に入りのカードでデッキを作ってよぉ、デュエルしてみたくなってさ!」

「なら城之内がすれば良いじゃない。」

「お、俺じゃあ話になんねーし……世南とは、その……別ん時にやりてーし……」

 杏子はいまいち分からない城之内に首を傾げた。
遊戯は暫し間を空け、考えた結果。

「わかった。僕は良いよ。世南ちゃんは?」

「うーん、遊戯様と皆のカードに勝てる気はしませんが、私も腕を上げたいし……」

 ちらっと横目で城之内を見ると、眩しいくらいの明るい笑顔とオーラを放っていた。あっさり負けて断りきれず、デュエルすることになった。
 

*

 暫くして、遊戯のデッキに、城之内、杏子、本田のお気に入りのカードを加えて作ったオリジナルデッキが完成したようだ。
世南も準備は万全の様で、ようやく始まった。


「それじゃあ僕のターンから……ん? 世南ちゃん、どうしたの?」

 ぼーっとしている世南を見て遊戯が訊く。何か様子が変だった。
俯いていて先程から声すら出していない。具合でも悪いのだろうかと杏子が近付いてみた。

「大丈夫……? 世南——」


 
 杏子が身体に触れた瞬時に、目を眩ます光が放たれる。遊戯の千年パズルの時よりも激しい。光の正体は世南の胸元のペンダントの様だ。
杏子達は腕で覆い隠し、影を作った。光が納まるといっせいに世南を見る。


「ふふ……表に出るのも久し振りだな。」


 茶色い髪こそ世南の容姿の一部、赤いリボンは真っ黒に染まっていた。顔を上げると目元も釣りあがって鋭い。
第一声は口調も変わっている。気品ある口調は、男の様な口調になっていた。

「誰だ——お前……!!」

 驚く城之内達、世南の異変に気付く。だが、それは彼女の怪しいペンダントの光で遮った。
遊戯達は魂が吸い取られたかのようにゆらりと倒れた。

 クスリと笑う仮の世南は遊戯の千年パズルに手を伸ばし、自分のものにしようと考えたが—

「くっ……!?」

「お前、世南じゃないな?」

 千年パズルから現れたもう一人の遊戯が、遊戯の身体を借りて生還する。


「貴様が、もう一人の遊戯……か。私はこのペンダントに眠る魂、そうだなセナとでも言っておこう。」

 彼女こそが、世南のペンダントに潜むもう一人の姿だった。名はセナと言うが、同じなわけだ。

「セナ? 同じ名前だな。それより、皆に何をした。」

「奴らの魂はお前のデッキにあるさ。」

「バクラの時と……同じ—」

 もう一人の遊戯が小さく呟く。

「バクラ……?」

 "バクラ"その一言を聞いてセナは一瞬言葉を失った。それもすぐ回復し、話を淡々と続ける。

「貴様には今から私とデュエルをしてもらう。貴様はどれほどの実力を持っているのか確かめたいしな。」

「墓地に行けば、皆の魂は戻らないんじゃないのか……?」

 訝しげに遊戯は訊いた。

「安心しろ、勝敗が決すれば魂は戻す。そこまで私は悪い奴ではない。だが、貴様に私は倒せないだろうな……ククッ」

 不敵な笑みと気味の悪い笑い声。もう一人の遊戯は不安も抱えずに口元を緩めた。

「良いぜ、受けて立つ。俺もお前の実力を知りたい!」

「ふふっ……あまり退屈だとつまらないからな、せいぜい楽しませてくれ……」

 お互いは睨みあった。マンガにすれば、火花を散らしても良い光景だ。




       ————デュエルッ!!!