二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエスト—Original— 漆黒の姫騎士 ( No.108 )
- 日時: 2011/04/17 19:51
- 名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)
「・・・まぁ、そういうわけで」
リーシアは苦笑しながら、手にした剣を構えなおした。
「あいつに静寂の玉、使われたら面倒だしな。回復呪文が封じられるのが、一番厄介だから・・・
レイサ、使うなら特技を頼む」
「特技ねぇ」レイサは、微妙に憮然としながらも、頷いた。「あることは、あるけど」
「へぇ、あったのか。意外だな」ティルスが本気で驚く様を見て、からかいの類ではないと認識したレイサは
少し格好つけて髪を払い、手首を曲げながら前に進み出る。
「ふん、あたしの『職』をお忘れ? 踊り子は、踊りという特技を持つからこそ、踊り子なんだから!」
ま、そりゃそうだわなとティルスが苦笑し、リーシアがお手並み拝見とばかりに場を譲る。
レイサはぱんぱん、と手の埃を払うなり、指を唇に当て、鋭い口笛を吹いた。
少々かすれた甲高い音に、ミミックの動きが止まる。マイレナはその間に、
さらにスピードを上げて(まだ速くなるのか、というリーシアの声が聞こえた)、どうにか逃げ切った。
「生まれながらの魔法使いにして踊り子レイサ、今ここに舞う!」
叫び、しなやかに両手を高々と上げ——レイサは、いきなり踊りだした。
軽やかなステップ、鮮やかな足さばき、柔らかに曲がる腰、誘うように空を切る腕、
何をとっても申し分のない踊りである。踊りのことなどとんと知らない三人ですらも、
レイサのいとも簡単にやってのけるその動きがいかに難しいかが分かった。
ミミックはその様子に唖然とし、完璧に他への意識を断っていた。レイサは残る三人に、
今よ、というように目くばせをした。
タン、と音もなく駆けたのはリーシアだ。横から剣をうならせ、そのまま薙ぎ払う——が、寸でのところで、
ミミックは間一髪、これを避けた。さしものリーシアも驚き、そのまま勢い余って倒れこむ。
不運にもそこには割れたガラスの破片が飛び散っており、すぐさま立ち上がりはしたが、
ダーマ神殿に着く前に負った傷が開き、さらに深くなっていた。
「リーシャっ!?」
腕から、膝から、いたるところから、暗がりのせいで黒く見える血が流れ出す。
リーシアはとっさに呪文を唱えかけ——思い直した。静寂の玉を使うきっかけを作ってはいけない。
(・・・このくらい、平気だ。[あの時]に比べ、れ)
「・・・・・・・・・・・・・・・・・っ!?」
リーシアの脳裏に、何かが浮かぶ。[あの時]? 何のことだ・・・もっと深い傷など、負っただろうか?
ここまで血を流したのは、久しぶりなのに——・・・?
「・・・・・・・・っだぁっ!?」
額に伸ばしかけた手が、マイレナの叫びによって封じられた。マイレナもまた、リーシアの方向へ
倒れこんできたのである。尤も、彼女の場合はリーシアよりも飛ばなかったのだが。
「っかわしすぎ、このぉっ」
どうやら彼女の攻撃もまた、かわされたらしい。リーシアは意識をはっきりとさせ、叱咤し、立ち上がる。
腕に刺さった破片を大きな物だけ抜いて、顔をしかめた。
「ちょ、リーシャ、治療しないと!」
「いい。かまわない・・・ 静寂の玉_あれ_ を手に入れれば、いくらでもできるからね」
「大丈夫か?」ティルスが問う。「薬草、一応使っとけよ」
「あぁ。それなら大丈夫かな」
「むぅ・・・せっかく注意引きつけておいたのに」レイサがむくれる。
「このあたしの踊りを無視して攻撃をかわすなんて、いい度胸じゃないっ・・・!」
「レイサ、怖い怖い」
マイレナが突っ込み、レイサは鼻を鳴らし、「・・・とりあえず、もう一回・・・」手をあげた時だ。
っがくん!
「っ!?」
レイサの足が、急に止まった。
Chess)久々の更新であります。