二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエスト—Original—  漆黒の姫騎士  ( No.110 )
日時: 2011/04/21 22:18
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)

「ちょ・・・ちょっと、なん、でっ・・・!?」
「レイサっ」
 レイサの名を呼び、マイレナは彼女の元に駆け寄る。
「大丈夫っ?」
「あ、足が、動かない・・・!」
「踊封呪文_ペスカトレ_ 、か・・・」ティルスだ。「名の通り、踊る者の足を止める呪文だ」
「なぁっ!? ふぅざけんなぁ、あたしの得意技二つも封印するなんてぇぇっ・・・」
「レイサ、怖い。すっごく怖い」
 一気に三歩ほど下がって、マイレナは控えめに言う。
「・・・ねぇリーシアぁ、もうここはさ、呪文でちゃっちゃと倒さない?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 あくまでリーシアは無言のまま拒絶する。
「“ちゃっちゃと”倒せるんならな」レイサの様子が特に重体でないことを理解したティルスは、
いつものようにからかい半分でそう言った。レイサもそれ(ティルスの事情)は重々承知しているが、
今回はその皮肉に対しじろっ、と睨みつけてみて、一度鼻を鳴らし、いきなり 火炎呪文_メラミ_ を
ミミックに向けて投げつけた。
「あっ、バカ・・・!」リーシアが絞り出すように叫んだが、もう遅い。
「ぎゅがっ!」ミミックは叫ぶ、が、倒れてはいない。再びレイサは集中する。が、ミミックもミミックで、
静寂の玉を天高く投げつける。
 どちらが早かったか。

 静寂の玉の効果の方が、早かった。

「メラミっ!」
 レイサは高らかに叫んだが、ミミックにつきつけた指先からは何も生じない。ぷすり、と情けない音がしたのみだ。
「え。・・・ちょっと? ・・・ちょ、メラミっ」
 結果は同じである。さすがにもう怒る気にもなれないレイサ、「うっそー・・・」とがっくり、肩を落とす。
「レイサ・・・わたしの回復呪文まで、封じられたぞ。何のために怪我を放っておいたっていうんだ」
 不機嫌さを包み隠さずリーシアは言う。マイレナがここは素直になった方がいいよ、と三年間の付き合い上
そうレイサに耳打ちした。もちろんレイサは最初からそのつもりであり、「・・・ゴメンナサイ」と小さく言う。
「まぁまぁ。半時も経てば、元に戻るからよ。とりあえず、乗り切ろうぜ」
 ティルスが珍しくそう言ってリーシアをなだめる。むー、と不満そうな顔をしたままではあったが、
リーシアは優先順位を正しく理解し、やれやれと肩をすくめた。

 ミミックの反撃が始まる。犬歯の並ぶ歯を見せつけるように大きく開け、
散々ひどい目に合わせてくれたレイサをまず狙った。
「げ、ちょ、じょ、冗談じゃないよっ」
「さがって!」
 マイレナはレイサをかばうように立ちはだかり、剣を中段にかまえる。リーシアもマイレナに合わせた。
「はぁっ!」マイレナの気合の声とともに、剣が斜めに振り下ろされる。
ミミックは持ち前の俊敏さで、余裕でこれをかわした。
「な、何か腹立つ・・・」
 脱力した声で、マイレナはそう呟いた。
「・・・あれ?」
 そこで首を傾げたのは、ティルスである。さっきから、何かもやもやとしたものを感じてはいたのだが・・・
やはり、そうだ。あの動き。否、あの箱の魂そのものが・・・どこかで見たことのある者にかぶっているのだ。

(誰だっけ・・・戦っているのを見たことがある・・・?)

「かわしすぎっ、このっ・・・」

 身のかわし方と、ものを追いかける姿。
あれは——・・・。

「あ」

 ふっ、と、パズルのピースがはまったように、もやもやとした霧が一気に消え去るように・・・ティルスは、思い出した。
「あ・・・あぁあっ! 思い出したっ!!」
 びっ、と指先をミミックに定め、ティルスは叫んだ。彼の叫び声など聞いたことがなかった三人はびく、として
思わず動きを止める。マイレナとリーシアがそのことに気付き、動きを再開しようとしたが、
その前にティルスに「ちょっとどいてくれっ」と言われ、驚いたまま道を譲ることとなる。
「ちょ、と、・・・おぉいティルス〜・・・」
 マイレナの声は完全無視される。


「あんた・・・カレイム! カレイム親衛兵だろっ!?」


 そしてティルスは、ミミックに宿る魂の本名を叫んだ。







                       Chess)長いので以下略。