二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエスト—Original—  漆黒の姫騎士  ( No.117 )
日時: 2011/04/28 22:10
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: fckezDFm)

「それにしても」
 落ち着きを取り戻したカレイムである。あたりを感慨深げに眺め、尋ねる。
「ここは一体何処なのですか?」
「痛いところを突いてくれるな・・・実は詳しいことは分かってないんだ」
「地獄、ってセルハは言ってたわね」レイサ。「どこまでほんとか分かんないけど」
「地・・・獄?」カレイムは復唱。
地獄、地獄・・・と復唱し、はっと顔をあげる。
「まさか、根界!?」
「はぁ?」
 ティルスは頓狂な声をだし(ちなみにもうターバンは巻き直した)、マイレナが「何それ?」と聞く。
「えっ? あ、そうか・・・皆さんはご存じないのですよね。・・・世界の古い道理です」
 カレイムはそう言って、説明を始めた。



<説Ⅰ>
 太古の昔。
 世界の中心と呼ばれる場所にそびえたつ、世界樹。そこから生まれたと言う者たちは、
世界樹人、と呼ばれ、ある大いなることを成しとげた。
それは、ふたつの別の世界を作ること。
悪しき魂と良き魂、何万の時が経てどもその二つは存在し続ける。何らかの理由で、彼らはそれを分けた。
 悪しき者は闇の世へ。
 良き者は光の世へ。
 死した後、[魂]が向かう場所として作られた、ふたつの世界なのだ——



「ちょいまち」
 マイレナである。
「んじゃそれ、つまり、私ら悪い奴で、死んじゃったってことにならない?」
「まぁ、これはまだ一つの説です。次の説もあります」
 カレイムは話を続ける。



<説Ⅱ>
 死した後と言うのは過去の話である。 
何故なら、死した後に光と闇で分かれるからと言うのを理由に、良き者が悪しきものに苦しめられた時、
自ら死を選ぶようになったのである。それに気付いた世界樹人たちは、今度は死した後ではなく
人間の眠る間に魂の行ける場と変えたのである。



「・・・なんか」
 今度はリーシアである。魔力がようやく戻ったのか、治療は既に完了していた。
「やけにおとぎ話めいているな。第一、変えた、って・・・おかしいところだらけだ」
「確かになぁ・・・そんな世界の存在が信じられたってのも変な話だし」
「ずっと後になってから変えたとしたら、世界樹人ってやけに長寿なのね」
「それにさ、ここが闇、って言っても、いい人、たくさんいたしさ」
「悪そーなオヤジもいたけど」レイサ溜め息。
「まぁ、そうなんですよね。世界樹人の子孫は今でも存在しているのですが、実際彼らが何者で、
一体何をしていたのか、分かってはいないんです。世界で有名な割には」
 カレイムは肩をすくめる。
「子孫・・・あぁ、なんとかの継承者、ってやつね。・・・で、何で“コンカイ?”」
 マイレナの問いに、カレイムは今度はすらすらと答える。
「根界——木の根ですね。ここは闇の世界、及び地獄と呼ばれています。光より、狭間である現世より、
下に存在する世界——木でいう、根もとです。・・・ほら、世界樹から生まれた人々ですから」
「シャレてるぅ」レイサ。
「根界、ねぇ・・・」リーシアだ。「まさか、現世を幹とか、光を葉っぱだとか言わないよな」
「あ、正解です」カレイム。「お見事大当たりですよ」
「・・・は?」リーシア、問い返す。
「共にカンカイ、ショウカイと言われています。まぁ、ずっと前の呼び名なんですけど」

「で、その世界樹ってやつだけどよ」
 ティルスが腕を組んだまま、首を鳴らす。
「今、どこにあるんだ? 少なくとも俺は、そんな話を聞いたことはないが」
「あぁ、今はない」あっさり、カレイムは言った。
「・・・はい?」マイレナ、
「ないの?」レイサ。
「葉は散り、樹木は焼かれています。もとはどこにあったのか、分かっていません」
「・・・残念」
 マイレナがため息をつき、話が中途半端ながらにも終わらせたカレイムは、ところで、ともう一度言う。
「何でわたしはこんなところにいるのでしょう? さっさと帰ることにします」
「あぁ、そうした方が・・・ちょっと待て。帰れんのか!?」
 ティルスの見事なノリツッコミである。
「あぁ、持っていなかったんだっけ——コレで」
 カレイム、小さなペンダントをひょいと取り出す。
それは——世界樹の、首飾りだった。マイレナ以外三人、「あっ!」と声をあげる。

「あ、ご存知ですか? じつはわたし、さっきの話の世界樹人の子孫なんです、実は」

「え。っええええええっ!?」
 マイレナ叫ぶ。
「これさえあれば、現世に戻れますよ。・・・皆さんも戻りますか?」
「当たり前っ」
「ちょっと待て、静寂の玉っ。これ忘れたら苦労がパァだぞっ」
 若干騒がしくなったが、どうにか四人は帰宅(?)準備を終える。

「・・・よろしいですね? それでは、行きますよ——」

 カレイムが首飾りに念じた。その刹那——



 あたりは、光に包まれた。