二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエスト—Original—  漆黒の姫騎士  ( No.131 )
日時: 2011/10/31 22:23
名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: EetYfsjv)

 狭い廊下、絶え間なく響く金属音。音は、それだけ。
他の声も、風も、襲撃の音も、二人の疲労の息遣いでさえ、聞こえない。
互いは、紛れもなく相当の実力者だった。戦場で鍛えた兵士と、生まれながら才能持つ王子。
ヴェルダンは思った。もし、我らの元に[この男の方が]いれば、間違いなく己と肩を並べる者だったろう、と。
否——考え直す。否、きっと、彼女も。彼女も、相当の実力者に違いない。
あれだけ、天賦の才だ、姫騎士だと騒がれていたのだから。
 兵士は笑う。その強さは惜しいが、この男には死んでもらわなければならない。そう、運命は変えられ——

「だっ!!」
「っ!?」

 笑みから出た若干の油断が、ヴェルダンのわずかな隙を生み出していた。セファルはそのわずかな間を狙ったのである。
「こっ・・・」
 恐ろしいまでの集中力だった。驚愕から生まれ続ける“僅かな隙”を狙い違わず突き続け——

 ついに、陰の喉に、剣が突きつけられた。

「運命とやらは——あんたの方が、間違っていたようだな」
「くっ」
「剣を捨てろ」
 セファルは鋭く言い放った。
ヴェルダンは冷や汗を滲ませる。
敗北は潔く認めねばならない、だが、今回はそう言っていられなかった。認めるわけにはいかない。
何としてでも、生き延びねばならないのだ——


「————————————————————ぅぁぁぁっ!!」


「っ!!」
 突如聞こえた短い悲鳴に、セファルは目を見開き、声の方向を見た。
今の声は。今の悲鳴は——
「・・・姫騎士、ですね。あなたの愛しい“妹”——」
 最後まで言わせず、セファルは剣を横にし、兵士の首にあてる。
「シーナに何をした!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・ふ、単に、魔物に会っただけでしょう。
まだ修行中の身には厳しい戦いだったのかもしれません」
「くそっ!」
 セファルは今更後悔する。シーナを行かせたこと、戦わせてしまったこと——





「———————————ッ!?」





 その時生じたセファルの隙を、ヴェルダンは見逃さなかった。
捨てると見せかけて——剣を、セファルの腹部に刺したのである。
セファルが全身の力を失くし、膝をつく。身体が震える。血が止まらない——
ぽた、と。シーナから預かったペンダントに、一滴の血が零れ落ちる。
何やってんだよ。セファルは、自分を叱咤した。
こんな傷が何だ。シーナは、シーナは、今、どうなっている?
助けなければならない、動け、動——
「やはり運命は、私のほうが正しかった」
 ヴェルダンは笑い、セファルを置いて歩く。
悲鳴の聞こえた方へ。
「く・・・くそっ・・・」
「怪我人は大人しくしていることです。それとも、死に急ぎたいというのならば、止めはしま」

 どっ、と。

 セファルは、自分の剣で同じようにヴェルダンを貫く。
「きっ」
 貴様、と言おうとした唇が動かない。膝を折り、ヴェルダンもまた、倒れる。
「・・・あんたを、行かせるわけには、いか、な——」


 セファルの頭が、がくりと下がった。









            Chess))あ〜生々しいよこれ絶対漫画にできないよ((何をする気だbyマイレナ