二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエスト—Original— 漆黒の姫騎士 ( No.36 )
- 日時: 2011/01/20 17:31
- 名前: Chess ◆1OlDeM14xY (ID: I2AL/1Kk)
レイサ・ルマネットは、ステージ裏に来ていた。
ステージ——年に四回ある大きな祭り(今回はそのうちの建[町]記念日)では、
毎回これを使って踊ることになっている。レイサは踊り子だ。生まれながらの魔法使いと言われたくなかった。
もっと、普通らしいことをしたかった。
魔力とは、魔の力、と書く。自分の中に、魔の力が備わっている。しかも、生まれながらに。
最初は、それを誇りに思った。自分は、他の人にない力を持っている。それは嬉しいことだった。
だが、現実は違った。レイサは幼い頃、その魔法力で人を傷つけた。
人より魔法的な守りの加護を受けたレイサなら、ある程度は耐えられる炎の呪文—— 火球呪文_メラ_ 。
それを、人に。
レイサは目を閉じた。今頃、あの旅人たちは、不良品の防具と武器に浮かれているだろう。
妙に、それらを見る目つきがおかしかったような気もするけど——あんな若い、旅経験も少なそうな、
ちょっとくらい強いだけの娘たちに、武器や防具の目利きなんて出来るはずがない。そう、思った。
・・・今回もまた、あたしは、役目を果たした。
「レイサぁ。出番だよ、あとちょいで」
「っ!」
踊り仲間のビュラの声で、目が覚めた。顔をぶんぶん、横に振る。
「今行くー」
レイサは小走りした。近くはないが、遠くもない距離なのだ。
「ん。・・・今年もまた、来たね・・・」
「うん」
ビュラは肩をすくめ、呟いた。
「あの化けものさ。・・・うちらのステージのあとに、旅人食うの、やめて欲しいんだよな、マジでさ」
化け物、エージェは毎回司会者の隣に立っている。そこで更なる生け贄の姿を探しているのだ。
もっとも、追加で生け贄にされた町の人はいない。
だが、訪れた旅人、不運にもそのステージを見に来ていた彼らは、容赦なく犠牲者にされた。
「・・・ま、アイツがいなくなりゃこれ以上のことはないんだけどさ」
そうね、と、口の中だけで呟いた。エージェは毎回、油断した旅人、これから化け物を倒してやろうと
未来のことばかりを考え浮かれる旅人をわざわざステージに上げている。
そして、“報酬の武具防具”で挑みかかろうとする彼らを、嘲笑い、住民の前で贄とした。
魔物らしい、残酷なやり方。
「・・・駄目ね。うちらは、一生この町から出られない。あいつに見つかったら、即次の生け贄決定だし——」
「そういう事は、大きな声で言うものではないのでは?」
ビュラの華奢な体がびくん、と動いた。レイサの目が大きく開かれる。
「エージェ・・・!」
・・・それは、“化け物”、エージェ——
「・・・失望しましたよ、ビュラ嬢。そして・・・レイサ」
エージェの右手が、ビュラの肩に置かれる。馴れ馴れしい、などと言う余裕はなかった。
「今日は気が高ぶりましてね・・・私の求めた血に、巡り合えるような、そんな気が・・・」
「うっ!」
ビュラの肩から、つっ、と血が滴る。白銀の衣装が、紅に染まってゆく。
「やめて。ビュラを放しなさいっ」
レイサは奥で歯軋りした。二度と使わないでおこうと決めた自分の魔力が、ふつふつと沸きあがってくる。
自分の周りの、魔力から生じた熱風が、レイサの髪を浮き上がらせる。
と。エージェがビュラを掴み、グッと前に突き出した。レイサははっとして再び目を見開いた。
やれるものならやってみろ、死ぬのは私ではなくビュラだ。果たして、[再び]耐えることは出来るだろうか?
そう言われた気がして、レイサの魔力はゆるゆるとおさまっていった。
幼い頃、消えた焚き火に火をつけようとして、失敗し・・・怪我を負わせた『人』、それがビュラだった。
だが、彼女はもう気にしてはいなかったし、レイサの良き理解者となってくれていた。
でもそれは、二度と、繰り返したくはない出来事。
——出来ない。あたしには、出来ない・・・!
エージェはニヤ、と笑う。歯向かったその二人に、どんな『罰』を与えるべきか。
そう考えた、——瞬間。
ぼ ぉん!
「っ!?」
後ろから急に聞こえた大きな音に、エージェ含む三人はびくりとした。
その刹那、一瞬だけ目をそらしたエージェの手首を、白い刃がなぎ払う!
「かぁっ!」
エージェが呻き、ビュラを掴んだ手が放される。倒れこんだビュラを、レイサが抱き止めた。
「生け贄は私たちじゃなかったのー?」
そして、こんなときだというのに、楽しそうな声。
「・・・あっ・・・!」
レイサは、その顔に、見覚えがあった——
Chess)あれ?何か中途半端・・・?