二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエスト—Original—  漆黒の姫騎士  ( No.39 )
日時: 2011/01/23 20:22
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: FjkXaC4l)

 その、明らかに場違いな楽しそうな声に反応してから——レイサはうろたえた。
 蒼い髪、蒼い瞳。勝ち気で、おてんばそうな、その娘。

「マイレナ・・・!?」

「ハイ正解。記憶力いいね」
「なっ、何なの、さっきの、爆発は・・・!?」
「ん? ああ、 空爆呪文_イオ_ のこと? あれは、リーシャが」
「“リーシア”だっつぅに」
 リーシアもすたりと、どこからともなく着地する。
「とにかくレイサ、あんたはその子を安全な場所に。マイ、準備は?」
「ばっちし上昇中」
「・・・何ソレ?」
 漫才のように話す二人を見て、レイサは絶句した。
手に収まるそれぞれの武器。それは、このアインテルスの武器屋に売っているものではない。
彼女らが、元から持っていたものだ。確かに、武器屋で買い物をしたと、連絡が入っていたのに。
しかも、リーシアの言葉も言葉だ。“安全な場所に”?
・・・まさか、さっきのやり取りを見ていたのか。
 [あたし]が本当は魔物とグルじゃないってことを、分かってくれたの?

(この二人・・・何者・・・!?)

 たった二人で、住民二十人を相手に、余裕の勝利。
 武器防具の真偽を見極める眼力。
 気配を隠し、話の内容を聞き、判断する力。
 そして、今ここで、戦いを始めるこの大胆さ——

(もしかして・・・この人たちなら・・・!)
「よくも、私を・・・人間が小癪な!」エージェが憎々しげに顔を歪める。
 エージェは、右手を高々と天にかざし、さっと顔を覆った。隠れていた右目があらわになる。
その下は、黒く縮れた、肉がむき出しの醜い顔だった。火傷でも負ったような——
「私は、生贄を食らい、魂を捧げる者! すべてはあのお方のため。
強い肉を食らえば、あのお方は強くなり、私は美しくなれる」
「な・・・何いきなり説明してんのさ」
 マイレナが唖然、としたが、リーシアはしっ、と言って止めた。
「・・・私の魔法を、受けてみよ!」
 言うが早いか、エージェは 風巻呪文_バギ_ を放つ。渦巻く真空の刃が、マイレナの肩を切り裂く。
「ってぇ!」マイレナが呻く。
「ホイミ」
 横で、リーシアの冷静な声がする。リーシアの手が、マイレナの肩に触れた。
滑らかな、冷たい水のような清々しい光が、マイレナの傷を癒す。マイレナの傷が回復した。
 応急呪文_ホイミ_ だ。腕と肩の痛みが、瞬時に消える。
「おぉ。さんきゅ」
 マイレナがありがたみの感じられない礼を言う。リーシアはやれやれ、と肩をすくめた。


「レイサ」
 ビュラが、呟いた。レイサははっとして、背負った親友を見上げた。
「・・・うちのことは、気にしなくっていい。・・・行って、レイサ!」
「なっ!?」
 レイサは息をのむ。[行って]——そんなこと。
「そんな・・・あたしは」
「言い方を変える。あいつと、戦って、レイサ。あんたの・・・その魔法でさ!」
 戦え? よりにもよって、あんたを傷つけたことのあるこの魔法で・・・戦え、というの?

 ——どうして。

「お願い。今のあんたなら、自分の力を自分の意志で使えるでしょ? あのとき傷ついたのは一人だった。
でも、この状態が続いたら、一人じゃない、たくさんの人が傷ついちゃうんだよ!?」
「——っ!」
 幼いころから悩み続けた、自分の魔法力。
 レイサは普通じゃない。そういわれた過去を持つ、自分の魔力。
 それを・・・いま、必要としている人がいる? それは、あたしをさげすみ、恐れた人々だろうか。
 ・・・わからない。もしそうだったら、嫌だ。
だけど、今頼ってくれるのは、認めてくれた、大切な親友。
 ・・・彼女が、あたしに、願っている。

「—————分かった」

 数秒ためて、レイサは言った。
「・・・行ってくる。あとで、[必ず手当てするから]!!」
 別の言い方で、生きて戻ることを誓った。
 そして、レイサは、戦場へ走る。走る——。