二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエスト—Original—  漆黒の姫騎士  ( No.44 )
日時: 2011/01/24 17:57
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: FjkXaC4l)

       【 Ⅱ 】


 アインテルスは、一日もたてば何事もなかったように立ち直っていた。
ちなみに、偽物の武器防具を買ったために無くなった報酬はマイレナが遠慮容赦なく再び請求。
何ゴールドもらったのかは知らないが、それは後のマイレナのお小遣いとなる。レイサの今までの行動のことも
すべて話され、謝罪されたが、マイレナもリーシアも気にしなかった。リーシアいわく、
「わたしらは死ななかったんだしもうどうでもいい」
 らしい。死んだら恨んだのだろうか、とマイレナは思ったが(そしてそれはかなり恐ろしそうだったが)
よくよく考えてみれば死んだら恨めないか、と勝手に納得する。迷信深い性格ではない。

 マイレナ、リーシアの二人は、レイサの口利きで宿屋にタダで泊まらせてもらった。
住民は、エージェがいなくなったことを心から喜んでいた。だが。

「何だったんだろーね・・・あれ」

 マイレナがポツリと呟く。昼のこと。
エージェは、あの光に焼かれ——おそらく、死んでしまっただろう。
「あの声も気になる」
 食後の腹筋をしつつ、リーシアが考え込む。リーシアは見た目の割にかなり食べるほうである。
だが食べた分だけ運動も過激なので、マイレナはリーシアの腹は
筋肉標本みたいになっているんじゃないか、と思ったこともある。・・・怖くて見たことはないが。
「何かが動いているのかもしれない。——第一、なぜこの町を狙ったのだろう」
「んなこと言ったら、キリがないよ。あぁいうのは、どっかをテキトーに定めて、そこにずっと居座るものだし」
「いや、リーシアの言うとおりだと思うわ」
 別の声がして、二人同時に(リーシアは床に背をつけたまま)扉の方向を見る。
おはよう、とやや遅れて言ったレイサだった。
「どーいうこと? ・・・って、もう昼ですけど」
「ま、今日初めて会いますから」
「祭りの片付けは終わったのか?」
「うん、ビュラの傷もリーシアの魔法で楽になってるみたい。ありがとね」
「ん」
 リーシアは次いで腕立て伏せに入る。・・・何も堂々と筋トレをしなくても。
「・・・あぁ、で、さっきの質問ね。・・・この町はある国の支配下にあるの」
 ずかずかと遠慮なしに部屋に入る。
「・・・ま、ちょっち酷いトコなんだけどね。でも、旅人はほとんどそっち方面に行くし、
第一その国へ行くまでにある中間の町は港なの。確実にそこのほうが、人が集まりやすいから」
「そうなの? ・・・てぇか、そのひどい国って」
「あれ、知らない?」レイサは目をぱちぱちさせて言う。
「グラデンヘルゼ王国って言」

          がたん!

「「っ!?」」
 マイレナとレイサが同時に音の方向を見た。リーシアだ。リーシアがバランスを崩し、ベッドの脚に腕をぶつけていた。
「り・・・リーシャ?」
 マイレナは見る。リーシアの、いつもは冷静な、無感情な顔に、焦り、戸惑い・・・類の色が見えていた。
(・・・な、・・・何? どうしたん、だろ・・・?)
「・・・悪い。バランス、崩した・・・続けて」
 明らかに失敗したものではないことは分かる。
グラデンヘルゼという名に、尋常でない反応を見せたことが分かる。
「・・・う、うん。・・・えと、グラデンヘルゼっていう、世界指折りの大国よ」
「・・・グラ?」
「グラデンヘルゼ」
 長ったらしい名前だね、とマイレナ。
「でもねぇ・・・今はほんっとに酷いよ」
 リーシアは筋トレをやめる。ベッドにもたれかかり、レイサの話を黙って聞く。

 初めて見せる、追い詰められた表情をして。







                Chess)長いので一度打ち切り。