二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエスト—Original—  漆黒の姫騎士  ( No.47 )
日時: 2011/01/25 20:40
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: FjkXaC4l)

 アインテルスを出て、東の川沿いに北へのぼり、その先の橋を渡ってさらに東へ進んだところにあった
崖沿いをぐるっと西へまわり、二つ目の橋を渡った先にあった港町ポスタミアに、三人はようやく到着した。
「あー疲れた」
 ついてからマイレナが、一番素直な感想を言う。
「マジでしんどかった。あー疲れた」
 意外と話に聞いた以上に遠く、上り坂も多かった。
だが、珍しい、リーシアの焦るような足取りに文句はつけられず、黙って歩くことで従ったために、
マイレナの足は棒状態だった。
 ドスン、とそこらの壁にもたれかかったマイレナを見て、レイサは苦笑。実は彼女の足もパンパンだった。
「今日はここで泊まる?」
「そうだな。情報収集もしたい」
「了解」
 レイサはおどけた敬礼をする。
「・・・わたしは何様だ?」
「あはは、冗談」
「・・・・・・宿屋、取ってくる」
 財布の事情を確認したリーシアは、宿屋を探し、歩いてゆく。

 宿屋の若女将に、部屋は一番安いところでいいと言うと、先客がいるといわれた。
仕方なしに、それより少し高いランクの部屋を頼む。
 もう一度財布の中を見てため息をついたリーシアの後ろから、若い男が部屋から出てきた。
闇色のターバンを巻いた、黒髪の若者だ。暗めの服装と、隙のほとんどない身のこなしから、盗賊だろうと想像できる。
(・・・盗賊でも泊めるんだ)
 リーシアはちらりとそう考え、夕飯などの交渉を始める。
財布の中身は割と金がたまっていたが、あくまでリーシアは安さを重視する。ケチ、というとぶっ飛ばされる。
 若者が扉を開けて外に出ると、ちょうどまさにその時、町の住民たちが騒ぎ出した。
何だあれは、こっちに向かっているぞと。
「?」
 リーシアがひょいと顔をのぞかせた瞬間、空が濁ったように薄暗くなる。
暗雲を率いて近づいてきたのは、
「——魔物・・・!?」
 リーシアが、その正体の種類を声に出した。

 住民が悲鳴を上げ、近くの家に逃げ込む。ほぼ無人となった町の外に、魔物たちが降り立った。
 多い。五匹十匹の話じゃない。一体、何故——?
 外にずっといたマイレナとレイサは、だらけきった顔を緊迫の表情に変え、同時に身構えた。
リーシアは夕飯の交渉を中断し、遠い位置から様子を見る。この辺りに生息する魔物ではない。
 一体なんなんだ・・・? と首を傾げかけた時、視界の横に誰かの姿を認識する。
ふっ、と見ると、それはひょうひょうとした表情の、例の盗賊らしき若者だった。
「・・・ここは危ない。家の中に入って」
 リーシアは鋭く言った。気遣う言葉に聞こえるが、ほぼ命令口調だ。
しかも、若者は聞いていなかった。入るどころか、リーシアを見て不敵に笑ってみせる。
「あんたは外に残るんだろ? 女だけで戦わせるわけにもいかない」
「なっ」
 グラデンヘルゼの話をしてから様子のおかしいリーシアは、思わずカッとしたが、今はそんな暇もない。
諦めたように笑い、足手まといには絶対ならないだろうと判断し、それなら行くぞと手すりを飛び越えて
三メートルほど下にすたりと降り立った。
「ふん」
 若者もそれに倣う。
 戦闘、開始。