二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエスト—Original— 漆黒の姫騎士 ( No.49 )
- 日時: 2011/01/27 19:25
- 名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: FjkXaC4l)
二つの町にかけて魔物退治をする羽目にあった一同は(とはいえティルスは別だが)
またしても町の英雄として崇められる。この空気が苦手なリーシアは、魔物退治のおかげでただとなった宿屋
(ちなみにそれならということで最高ランクの部屋を選んだ)で一人、
町を歩き回っているマイレナとレイサのために律儀にもハーブティーを淹れてやっている。
カップに湯を注ぎ、ハーブを浸して混ぜながら、リーシアは一人考えていた。
雷光呪文_ライデイン_ 。空を断ち割り、聖なる雷光の力で、電光石火の如く敵を成敗する神秘の呪文。
久しぶりに使った魔法だった。大きすぎる魔法なので、いざという時にしか使わないでおこう——と思った割に
使ったのは五年ぶりほどだろうか。
———それを使えるのは、この世に立った二人しかいない。
・・・ティルスの言葉が真実なら、自分に秘めたものの真の力と比べても、頷くことができる——・・・
それにしても、二人のうちのあと一人とは、一体誰なのだろう。
・・・一体。
コツコツ
「?」
ドアをノックする音、続いて静寂。マイレナでもレイサでもない。
「誰?」
返事はない。右手の爪を出したまま、慎重にドアへ近づく。
かちゃり、とノブの音を立て、用心して辺りを見渡す。左を見ても、何もない。続いて右を見ようとした——
刹那。
「っ!」
ごう、と音を立て、闇色の渦がリーシアめがけて飛んでくる! とっさに反応したリーシアでも、
よけるスピードが間に合わない。嫌らしくまとわりつく闇色の渦は、リーシアの身動きを許さない。
(な・・・に、これっ・・・)
リーシアは奥歯を噛みしめる。目をきつく閉じ、神経を集中させた。
リーシアの放った 生気_オーラ_ が、邪悪な呪いに抵抗し、そして——
ぱぁん!
花瓶が割れたような音がして、リーシアにまとわりついた呪いが砕け散る! 解放されたリーシアが
ふらりと壁に手を付き、向かって右に視線を向ける。
「っ?」
そこには何もなかった。誰もいなかった。だが、不意に嫌な気配を感じ、振り返る。
同時に、大きく目が見開かれた。
(誰だ・・・?)
若くて、髪の色は闇色。だが一瞬、なぜかマイレナの姿が頭をよぎった。
全然似ていない。第一、その姿からして男だ。——だが、その男が目を開いた瞬間——再び、リーシアは硬直した。
(違う。——雰囲気だ。雰囲気が、似ている・・・!?)
「やはり通用しない、・・・か。——“お久しぶりです”」
その男の話し声。低くも高くもない、不思議としか言いようのない声だった。
静かで、それがなぜか恐ろしい。
「・・・とはいえ、直接会ったことはないが——」
「——誰だ、お前はっ・・・」
男の表情が、少し和らぐ。微笑したようだ。
その瞬間、どことなく懐かしいような、覚えのある何かを感じる。だが、やはり知らない。
先ほども思った通り——“雰囲気”にその感覚を抱いたのだろう。
「さすが、というべきか。一目で、俺がどういう人物か判断するとは」
「誰だと、聞いている」
「やれやれ。噂通りだな」
今度は肩で息をつく。
「・・・耳にしたことは、あるだろう——“フェイクス”」
がたん!
リーシアの足が引かれ、扉に強く当たった。拳が震え、唇がわなわなと動く。
必死に声を出そうとするが、それもままならない。
男——フェイクスは、淡々とした口調で話を続ける。
「貴女がこの町に来たと聞いたんでね・・・確かめさせてもらった。魔物で——
貴女と、あともう一人しか使うことのできない幻の呪文・・・ 雷光呪文_ライデイン_ を使えるかどうか。
計画通り、貴女はそれを唱えた。・・・これでようやく、確信した」
リーシアの息がぐ、と詰まる。ただ話を聞くことしかできなかった。
「——五年前、マレイヴァの王国を襲撃し、雷光呪文の使者、“闇と光の継承者”もろとも城を焼き尽くした・・・
にもかかわらず、貴女は生きてここにいる。さすが、『姫騎士』と呼ばれただけはある、
“リーシア・レヴィン”——否」
台詞めいた言葉で、フェイクスは決定的な名を発した。
「——マレイヴァ国姫君、ヴェルシーナ殿下」