二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエスト—Original—  漆黒の姫騎士  ( No.55 )
日時: 2011/01/28 20:55
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: FjkXaC4l)

「——闇と光の継承者か」
 きらきらと煌く、宮殿らしきその部屋——
約三百もの部屋を持つ、信じられないほど大きな屋敷の主は、
その屋敷の入り口から最も遠い場所に位置する部屋にいた。
「五年前のあの襲撃で、一瞬にして焼け崩れたかの城から、よくぞ生き延びて見せたものよ、ヴェルシーナ殿下・・・」
「・・・申し訳ございません」頭を垂れたのはフェイクスその人だ。
「よい。あれで死したのなら、いささか呆気なさすぎるというものだ・・・“継承者”のことは伝えたな?」
「はい。魔族がそれを知っていることも、継承者のことも・・・そしてご命令通り、生かしたままです」
「優秀だ」主は笑った。「唯一の人間にしてはなかなかの者だ。さすがは余が認めた者」
 フェイクスは黙って話を聞き続ける。
「必ずや、奴はだれよりも強くなり、ここへ訪れることだろう・・・直接その面を拝むまで、
配下どもにとっ捕まり引きずり出されるような女ではない」
 くつくつと笑う姿と言葉的は、思い切りいやらしいオッサン化している。
確かこの男は魔物だったはずだが——とは思ったが、人間の言葉を話す時点で魔物離れしているとも思い直した。
 だが、再び考える。・・・本当に、魔物なのだろうか。あくまでそれは別の者に聞いた話であって、
本人から聞いたわけではない。よくよく見てみると、どうしてもこの男は人間化した魔物ではなく、
本物の人間のように見えてならなかった。
 主は一通り笑い終えると、急に真面目な顔つきになる。瞳は、危険な色をしていた。
「・・・ただし。[あの]首飾りだけは、揃えさせるな。何としても阻止せよ——
とはいえ、それは一人では重荷か」
「いいえ」フェイクスははっきりと答える。「可能です」
「ほう? 大した自身だ・・・面白い。言い切るのなら、お前ひとりに任せるとしよう。下がるがよい」
 フェイクスは敬礼した。そして、ほとんど音もなく、立ち去る。


 そして、思った。


 ・・・あんなところで会うとは思わなかった。
 港町ポスタミアで魔物と戦っていた一人、
 あの少女、幼なじみのあの娘に。

 ・・・あの日、彼女だけ、生き延びていたのだろうか。どうやって。
 そして、どうして、教えてくれなかったのだろう。
 教えてくれたなら、俺は今こんな所にいなかった。

 ・・・このままでは、敵同士となってしまう。



 あの、蒼い目と髪の少女——マイレナと。







                Chess)  次回、遂にマイレナの過去編。【 断章——マイレナ 】にて。
                    リーシア:作者その宣伝癖なおせっ