二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエスト—Original— 漆黒の姫騎士 ( No.56 )
- 日時: 2011/01/29 20:44
- 名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: FjkXaC4l)
“ 始まりは、知っている。
終わりは、知らない—— ”
【 断章——マイレナ 】
「マイレナ! マイレナ!」
風変わりでのどかな、山々に囲まれた小さな村。
炎の門と水の門と呼ばれる、二つの扉を持つフィルタスという名の村の小さな家に、大きな声が響き渡る。
——十六歳の村娘マイレナは、日も本格的に照り始める
青玉_サファイア_ の刻(この世界でいう、9時のこと)にもなってグースカ眠りこけていた。
マイレナの母・・・マイママは、そんなお気楽太平洋な娘を起こしにかかるという、
何ともハードルの高いことをしていた。
しかしこの呆れた娘、一度寝入ったら騒ごうが喚こうが、顔の上をナメクジが横断しようが起きることがない。
しかし、そんなマイレナを起こす方法が、二つは存在した。
今日はマイママは左手にフライパン、右手におたまを持って仁王立ちをしている。
もちろんそれらを使ってマイレナをフライパン、・・・ではなくコテンパンにして起こすわけではない。
第一それでは起きない。
それでは何をするか、というと。
——マイママは、フライパンを垂直に立てた。右腕を背中の後ろに、これでもかというくらいに思いきりひねる。
一呼吸分おいて、そして——
ぐわ ぉぉお おお ぉぉ ぉんっ!!
「ひぃええええっ!」
・・・思い切り、フライパンにおたまをぶつけた。
そしてマイレナの反応はというと、腰と足の間の角度を90度に立て、がばっと起き上っていた。
フライパンで叩かれても起きない娘が、おたまをフライパンにぶつけるだけで一発で起き上がる——
・・・というのも不思議な話なのだが。
しかし、毎回毎回このような羽目にあう可哀想なこの二つの道具は、
マイレナの家の物にしてはなかなかの寿命を保っていた。
それはさておき、目を覚ましたマイレナは大いにしかめ面をし、
「・・・ちょっとママ。もーちょい起こし方ってもんが」
おはようとも言わず、そう言う。しかめ面をされたマイママは、ふん、と鼻を鳴らす。こちらもおはようとは言わない。
「あーでもしなきゃ、起きないでしょーが」
でた。口癖・あーでもしなきゃ以下略。
村娘の証の服、つまり民族衣装に着替えながら、マイレナはマイママに尋ねる。
「・・・で。私を呼び起こして[いただいて]袋持ってるってことは」
皮肉気味にマイレナが言ったが、マイママはそれを無視。
「そう。村の外まで、薬草を取りに行っておくれ」
マイレナ溜息。
「・・・またか」
マイママ、反撃。
「またとは何ぞや。いいから行って来いこのねぼすけオタクジラがっ!」
「はいいいいいっ」
瞬時にそこからマイレナの姿が消える。
「袋忘れるな扉を開けてくなっ」
マイママが叫び、
「オタクジラってなんだ・・・?」
マイレナが呟いた。もちろん、答えてくれる人はいない。