二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:   ドラゴンクエスト—Original—  漆黒の姫騎士  ( No.60 )
日時: 2011/01/30 13:50
名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: FjkXaC4l)

「遅いよマイレナーっ」
 本日二度目、ティスが言う。
「・・・何が三十分だ。そろそろ一時間だぞ」
 フェイクスが言う。そもそも走ったとて三十分で往復できる距離ではないのだが。
 ナヴィが笑って、フェイクスに確認した。
「マイレナ、帰ってきたのね?」

 ナヴィは目が見えない。輪郭だけはわずかにわかるというが、顔までははっきりしないという。
つい最近、そうなった。その理由は、大人たちなら知っているようなのだが、どうしても教えてくれなかった。
そもそも、理由なんてあるのか——

「ごめんごめん。・・・ちょっと、いろいろあって」
 きわめておどけた様子になるように努めた。
だが、顔は見えない、声で人の感情を読み取るナヴィには、マイレナの本当の感情を読み取った。
何か辛いことがあったのだろうか。そう思って、あえてナヴィはおどけ返して見せた。
「道草?」
「・・・・・・・・・・ナヴィさん?」
 だが、そんなナヴィの気遣いにも気づかず、マイレナは妙に凶悪な笑顔で振り向く。
あ、元に戻った、とは思ったが、次なるその(微妙な)凶悪な声にナヴィは妙な引きつり笑いを見せる。

「それは誰の事でしたっけぇ? チビの頃遊び終わったら真っ直ぐ家に帰れと言われたにも関わらず
ティスのかくれんぼに付き合って色んなトコふーらふーら歩いてついでに道端のリンゴ拾って食った後
わたしの家の樽の中に入ったら私が気付かず上から重石乗せて閉じ込められてティスに完全に忘れられて
夜まで家に帰れなくなって半ベソかいてた超ド道草娘は一体何処のどういうナヴィさんでしたっけぇぇ??」

 呼吸する暇なく(大した持久力だ)しゃべり続けたマイレナに、言わなきゃよかったかもと思いつつナヴィは
「・・・そんなこと、あったかしらね?」とおどけてみせる。
「てゆーか、さっきの言葉おかしいところ結構あったよね」
 ティスが冷静に指摘。
「・・・・・・・・・」
「まっ、マイレナの場合それが当たり——ふぎゃっ」
「・・・・・っいーかげんにしろ」
 ティスの首に巻いたターバンをきゅうきゅうと締め付けながらフェイクスが言った。
「お前ぼけっとしていても[一応]男だろ。いいからさっさと手伝え、あれだけの箱を一人で運ぶのは大変なんだから」
「うくくぁくあおぉぉっ。フェイちゃん放して、死んじゃうっ」
「お前の答え次第だ」
「僕死んだら手伝えないよっ」
「お前の生まれ変わりが真面目であることを祈ってやる」
「ふやぁぁ、わかったわかったぁ!」
 ターバンを緩めてもらい、大げさに肩で息をついたティスは、フェイクスをちらり、と見る。
「でもさぁ、力仕事なら僕よりマイレナの方がデキるんじゃないの? 僕か弱いからさぁー・・・うぎゃ」
 再びきゅうきゅうと無言のままに首を絞められ、「わかった、わぁかったぁ!」と虚しく叫ぶティスである。

 そして、儀式の準備は、少年たちの手で進められていく。