二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ドラゴンクエスト—Original— 漆黒の姫騎士 ( No.64 )
- 日時: 2011/01/31 20:34
- 名前: Chess ◆JftNf0xVME (ID: PdKBVByY)
「・・・さっきティスに言われて、思い出したんだ。二年前・・・俺がここに戻ってくる、前のことを」
「ここに戻ってくる前?」
「あぁ。——ここでひっそりしていることが嫌いだった俺の両親は、俺を連れて勝手にここを出た・・・
ある国について、親はうるさいほどにぎやかなその国で遊び呆けていたよ。俺を放っておいて」
「なっ」
マイレナは唖然とした。フェイクスの親には一度もあったことがない。
そもそも、彼らが出て行った時、マイレナはまだ六歳だったのだ。
「でもやがて、遊び呆ける金も尽きて・・・一体どこで手に入れてたんだろな。親は働きもしない。
だから・・・俺が、その国の兵士として、働かされたんだ」
「——な・・・なに、それ・・・」
フェイクスはふっ、と笑って、目線を落とす。
「過ぎた話さ。——それでも、今でも夢となり、蘇ってくる・・・
国の兵士として、自分の手で滅ぼしてしまった、北東の大国のことを」
「大・・・国?」
フェイクスは頷く。ぎゅっと手を握りしめて。
「この村じゃ知られていないけれど、他国には魔術が存在する。時に人を助け、時に人を傷つける。
俺は、そのうちの一つを自分の意志で使える。けれど、あの時はそうじゃなかった・・・
聖邪の狭間の国を滅ぼせと、後れを取るなと言われ・・・いつの間にか、見たことのない魔物が周りにいた。
ののしられ、迫られ・・・俺は、意思とは逆に、城に向けてその呪文を放ってしまった。
灼熱の炎の球、 火炎呪文_メラミ_ というものを」
「まさか・・・それで」
「ああ」フェイクスは頷いた。
「城は焼けた。中から、人の死骸がいくつも見つかった。・・・俺は、人を殺した」
「———っ・・・」
マイレナは息をのむ。声が発せない。
「俺は弱い」吐き出すように、フェイクスは言う。
「俺がもっと強かったなら・・・奴らに反発できていれば、あんなことには」
「フェイクス!!」
マイレナの強い口調に、フェイクスは無意識のうちに口をつぐんだ。
ゆっくりと、マイレナに視線を合わせてぎくりとした。真っ赤なマイレナの頬に、一筋涙が流れている。
それを見た瞬間、あぁ、俺は何話しているんだと、自分を咎めたくなる。だが、マイレナは、確かにこういった。
「自分責めても、死んでしまった人は戻らない。何も変わんないよ・・・忘れろっていうことじゃない。
でも、過去に悩んで自分を戒めるなんて、そんなの、ダメだ・・・」
フェイクスは、肩を震わせる少女に、お前は何も知らないからそんなことが言えるんだと、皮肉った思いを顔に出した。
が、とりあえず、一言だけ、言う。
「悪い」
「な・・・何で、私に・・・謝るん、だよ・・・っ」
さぁな、俺にもわからないと口だけでつぶやき、フェイクスは闇がかった茜色の空を見上げた。